広島のローカルスーパー、ノムラストアーに学ぶ、アフターコロナに求められるスーパーの在り方

平山友美(フードプランナー)
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ローカルスーパーに学ぶ、コロナ禍の総菜売場に求められること

 一方で、食品スーパー業界はコロナ禍の内食需要の高まりを受け総じて好調だ。ただ周知のとおり、唯一ネガティブな影響を受けているとされるのが総菜部門である。家庭で料理を作る人が増えるなかで生鮮の売上が上昇し、相対的に総菜への需要が低下したこと、また感染拡大防止の観点で来店頻度を抑える消費者に、保存がきかない総菜が忌避された、といった背景がある。

 ただ、コロナ禍でも総菜が堅調に推移したスーパーもある。その1つが、広島市内で3店舗を展開する「ノムラストアー」だ。実際に関係者に話を聞いてみると、「コロナの影響は……とくにないです!」とあっさり返してくれた。好調の秘訣はどこにあるのだろうか。

 コロナ禍で来店頻度が下がるなか、客単価をアップさせることがスーパーにとって急務となった。そこでノムラストアーは消費動向の変化をいち早く捉え、高単価商品の開発と販促に力を入れた。総菜部門では来店動機になるような話題性のある商品をつくり、SNSで頻繁に発信するという手法を取り入れた。新商品の開発だけでなく、定番商品についても「映える」改良を施した。実際に売場に並ぶ商品を見てみると、とくに什器や照明に工夫があるわけではないのに、思わず目を奪われる商品が多く並んでいるのだ。

ノムラストアー
ノムラストアーの「具材たっぷりのこだわり巻き寿司」

 なかでも力を入れているのが、コロナ前から大きな売れ筋の1つだった巻き寿司だ。「具がたっぷりのこだわり巻き寿司」(税込538円)の名称で「サーモン」「ハマチ」などを販売。その名のとおり具材の大きさにこだわっており、「酢飯よりも具の方が多い!」と話題になっている。色鮮やかな切り口が売場に映えるよう、パッケージにも工夫を凝らしている。

ノムラストアー
旬のいちごを敷き詰めた「フルーツ杏仁」。4品種から選ぶことができる

 もう1つご紹介したいのが、日曜限定販売の「フルーツ杏仁」(税込646円)だ。3月は杏仁豆腐の上に旬のいちごをふんだんに敷き詰め、しかも「紅ほっぺ」「とよのか」「あまおう」「いちごさん」の4品種(4SKU)を展開している。

ノムラストアー
1日限定で販売された「かつおタタキ」

 加えて、ノムラストアーの総菜で特徴的なのが、目玉商品の周期が短い点である。筆者が店を訪れた日も、「かつおたたき」を1日限定で販売していた。開店前に店頭で「藁焼き」した本格的な一品で香りも抜群。多くのお客が足を止め商品を手に取っていた。

 このようにノムラストアーの総菜売場は見た目にも鮮やかな商品が数多く並び、しかもラインアップが高頻度に入れ替わる。売場そのものに「鮮度」があり、来店客をワクワクさせる演出がなされている。そしてそうした売場の情報をSNSを活用して”ファン”にダイレクトに届けることで、来店動機を創出しているのだ。 

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