コロナ禍で10年分のマーケティング効果!冷凍食品マーケットがいま熱い理由

冷凍食品ジャーナリスト 山本純子
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 17年からは、コンビニエンスストアで冷凍食品の売場拡大が本格化していく。かつて家庭用冷凍食品需要の半分以上を占めるといわれてきたお弁当向け商品は、少子高齢化を背景にコロナ以前より減少傾向にあり、代わって夕食向け商品やめん類、米飯類が伸びていたのだが、コンビニ冷凍食品は、「おかづまみ」(セブンイレブンの造語)というジャンルも開拓する。夕食のおかずにも、おつまみにもなる冷凍食品という意味だ。缶ビール・酎ハイなどを合わせてワンコイン(500円)という価格設定が受けた。さらに、個食需要に便利な1人前具付きめん類、使い切りのミックス野菜やフルーツまで、品揃えを広げていき現在に至っている。

出所)(一社)日本冷凍食品協会「令和2年 ”冷凍食品の利用状況”実態調査より
出所)(一社)日本冷凍食品協会「令和2年 ”冷凍食品の利用状況”実態調査より

 食べたいときにコンビニで買って帰れる身近な食品。冷凍庫にストックしておけば、いつでもすぐに食べられる冷凍食品の便利さ、美味しさに対する評価は、コロナ禍以前から高まっていたのである。また、「コストコ」や「業務スーパー」で購入できる大容量でお得な冷凍食品、安価に買えるドラッグストアの冷凍食品もかねてから注目されていた。ネット通販(EC)市場も含め、消費者から見た『買い場』は広がっていた。コロナ禍によりその傾向は一気に加速した感がある。

 冷凍食品の評価が高まる背景は他にもあった。それは、イオンが取り組むフランスの冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」の店舗展開(201611月~)、良品計画「無印良品」の冷凍食品発売(20189月~)である。いずれもその特徴ある品揃えで、冷凍食品の持つ幅広い可能性を示したと言って良いだろう。冷凍食品に対するイメージが変わった生活者も多かった。そして、両者とも店舗に加えECにも注力している。

コロナ禍で新規ユーザーが増える

 昨年3月以降夏まで、家庭用冷凍食品の消費は購入数も購入層も大きく拡大した。メーカー各社が秋の新商品発表会見を行った中で、メーカーの実感として最も印象的だった言葉は、「マーケティング活動がオートマティックに一気に行使された結果と同じ」(日清食品冷凍)であった。従来からの客は買い上げ点数を増やし、非利用者の新規利用が広がって、定着したのである。在宅時間が増え、買い物頻度が減ったことで、日持ちしない総菜より、冷凍食品を買い置く方が得策だと気づいた人が増えていった。

 国内生産品目の数量第1位の「うどん」も、ナンバーワンメーカー、テーブルマークによると、「玉うどんは間口(購入率)の拡大が奥行増(購入数量/人)を大きく上回った」という。チルドゆでうどんから冷凍うどんに切り替えた人が続出したのである。

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