1本5000円でも実はお得なワケ 6社の予約限定恵方巻と催事の戦略をプロが徹底解説!

解説=小関恭司(リンクスK)
Pocket

新型コロナウイルスの感染拡大で気軽に外出ができない昨今、家庭で充実した時間を過ごしたいという欲求は高まっている。そうしたなか、お盆やクリスマス、正月などの催事は、食品小売各社にとって売上を伸ばす絶好の機会だ。本稿では、総菜のコンサルティングで多くの実績を持つ小関恭司氏が、2021年の節分における食品スーパー(SM)、総合スーパー(GMS)、コンビニエンスストア(CVS)6社の予約限定販売の恵方巻を比較しながら、食品小売における催事の重要性を解説する。

恵方巻 節分 イメージ
コロナ禍においては、節分のような家庭内で実施するイベントのニーズが高まっている。 画像:akiyoko/i-stock

恵方巻の予約比率は約10~15%

 恵方巻はもともと大阪を中心とする関西圏の文化だ。諸説あるが、日本全体に広まったのは約30~40年前で、全国規模の店舗網を持つCVSが恵方巻を売り出したことがきっかけとされている。その後、関西地方以外でも徐々に恵方巻を取り扱うチェーンが増え、現在ではCVSだけでなく、SMやGMS、百貨店、専門店などでもみられるようになった。

 恵方巻については、数年前から売れ残りによる廃棄問題がメディアに度々取り上げられるようになり、食品小売各社は予約販売に力を入れてきた。以前は年が明けた1月上旬から予約を受け付ける企業が多かったが、最近ではクリスマスの時期から受付を開始するケースもみられるようになった。私が総菜のコンサルティングをしている企業では、恵方巻全体の売上に占める予約販売の比率が10~15%程度となっており、年々高まる傾向にある。

 コロナ禍においては、節分のような家庭内で実施するイベントのニーズが高まっており、私がヒアリングしている各社の恵方巻の全体売上は対前年比10~30%増となった。2020年は生産量を抑えたことで夕方以降に欠品が生じた企業が多かったことから、今年は各社数量を増やしたことが奏功した。

 近年では、恵方巻を全国に広め、売上を牽引してきたCVS各社が商品のラインアップを絞り込む一方、SMやGMSは予約販売、当日の店舗販売ともに品揃えや売場づくりにますます力を入れている。21年は、同じ食品小売でもコロナ禍でCVSが業績を落とす一方、SMが好調を維持していることから、この傾向がより強く表れた。また、CVSは店内製造ができないのに対し、SMやGMSはインストア加工で新鮮な生の素材やシャリを活用できることから、鮮度訴求という観点でもCVSは分が悪い。そのため、今後の恵方巻商戦の中心はCVSからSM・GMSにシフトしていくとみられる。とくに予約限定販売の商品に関しては高単価の商品が増えつつあり、味や品質も価格以上のものを提供する企業もみられるようになった。

実は割安!イトーヨーカ堂約5000円の恵方巻

 今回の調査で比較したのは、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)、イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)、ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)、サミット(東京都/服部哲也社長)、ローソン(東京都/竹増貞信社長)の6社。いずれも予約限定販売で、各企業のホームページなどで最も大きく打ち出されていた商品を中心にピックアップした。 イオンの「招福海鮮恵方巻」(1380円:以下、税抜)は、ミシュランで三ツ星を獲得した寿司の名店「鮨よしたけ」が監修しているのが特徴だ。サーモンやまぐろたたき、いくらなど定番の具材を盛り込んでおりシャリとのバランスがよく、上品な味わいとなっている。

 イトーヨーカ堂の「豪華絢爛! 25種海鮮絵巻」(4980円)は、今回調査した6社の中で具材が28種類(注:海鮮25種と卵などその他の具材3種の合計)と最も多く、価格も最も高い。売上を伸ばすためというよりは、話題づくりのための商品とみられる。しかし、具材の豊富さを考えるとこの価格は安く、値入率をかなり抑えているようだ。寿司専門店でこれほどの商品を買おうと思うと1万円は必要だろう。また、これほどの量の具材を入れ込んで成形するにはそれなりの技術が必要だ。このような商品を展開できるのは、各店舗への教育が行き届いている証拠でもある。 首都圏のSM3社では、ライフの「【極太】幸福海鮮太巻」(2580円)とヤオコーの「『極み』海鮮巻」(2580円)は価格が同じで、北海道産のホタテを打ち出すなど共通する部分も多い。サミットの「開運極太サミット巻」(2580円)もライフ、ヤオコーと同価格だが、具材の種類は3社の中で最も多く、「お得感」がある商品となっている。また、今回調査した6商品の中では唯一海苔の上にさらに卵を巻いており、これが大きな差別化要素になっている。

 ローソンの「なだ万監修 黒毛和牛香味焼の恵方巻」(1185円)は、商品名にもあるとおり、老舗の日本料理店「なだ万」が監修しているのが特徴だ。CVSはSMやGMSと異なり、店内製造ができないためか、海産物より日持ちのする牛肉をメーンの具材としている。また、長さ・太さともに6社の中で最も小さく、個食対応で手軽に食べやすい商品設計を意識しているようだ。

子供向けの恵方巻も必要

 今回調査した6社の予約限定商品をみていると、どの企業も

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

1 2 3

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態