コロナ前より売上をアップしている飲食店、専門店が実践している「顧客ストック型経営」とは!?

小阪裕司(オラクルひと・しくみ研究所代表)
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新型コロナウイルスの感染拡大によってとくに大きな影響を受けたのが中小規模の小売店舗だ。もともと大手チェーンとの厳しい競争や人口減少、人手不足といった問題にさらされていたなか、コロナ禍で客数が急減し、閉店を余儀なくされたケースも多い。しかし、「“ファン顧客”を増やす『ストック型経営』を志向することで、中小でも勝ち抜ける」と断言するのが、人の感性に訴えるマーケティング手法「ワクワク系マーケティング」の提唱者である、オラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏だ。ストック型経営の手法について、小阪氏に解説してもらった。

食品スーパーの店内の様子
“ファン顧客”を増やす「ストック型経営」が今後の競争を勝ち抜くカギになる(写真はイメージです)

コロナ禍でも強い「ストック型経営」の企業

オラクルひと・しくみ研究所代表小阪裕司 氏
オラクルひと・しくみ研究所代表小阪裕司 氏
こさか・ゆうじ●山口大学卒業後、大手小売業、広告代理店を経て1992年にオラクルひと・しくみ研究所を設立。人の「感性と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からはその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。2011年には博士(情報学)の学位を取得、学術研究と現場実践を併せ持った活動を展開。

 小売をはじめとするサービス業は立地産業といわれ、好立地にあれば客足が絶えることはないと考えられてきました。しかし、コロナ禍によって好立地の店からもお客さまの姿は消え、そうした考え方は正しくないことがわかりました。反面、コロナ禍でも、売上や利益を維持するどころか、コロナ前よりも伸ばしている企業もあります。

 一例を挙げましょう。私が主宰する「ワクワク系マーケティング実践会」の会員の中に、名古屋市内でレストランを経営する会社があります。もともと人気のレストランでしたが、緊急事態宣言後は予約帳が真っ白になったそうです。そこで、このレストランでは1人前8000円のお弁当や4000円の海苔弁当などの高級弁当の通信販売を始めました。すると、この店を愛する“ファン顧客”が次々に購入し、対前年同期比150%の利益を上げることができたのです。

 おいそれと買えるような金額ではありません。しかしファン顧客はこのレストランに絶対の信用を置いているから注文できるわけです。もちろん、店側もお客さまにただ金銭的な“支援”を求めるのではなく、外出自粛の中でいかに自宅で楽しめるかを考えてメニュー開発に努めた点も大きいでしょう。

 このように多くの“ファン顧客”を獲得し、彼らの支持を集め続ける企業の経営スタイルを私の研究グループでは「ストック型経営」と呼んでいます。不特定多数の来店客、いわば“フロー客”によって成り立つ「フロー型経営」とは対極にある経営手法です。このように“ファン顧客”が多い「ストック型経営」を実践する企業は、外的変化による打撃を受けにくいといえます。

「他店にない品揃え」だけでは独自価値は生まれない

 では、自社の“ファン顧客”を創造するためにはどうすればいいのか──。

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