新型コロナウイルスの“震源地”とされる中国だが、経済活動は力強い回復を見せつつある。国家統計局によると、2020年第1四半期(1~3月)の国内総生産(GDP)は対前年同期比6.8%減だったものの、第2四半期には同3.2%増とプラスに転じ、第3、第4四半期には6%増にまで復調すると予想されている。新型コロナウイルスの感染拡大は中国でも、小売業、飲食店、旅行業、イベント関連業などを中心に大きな打撃を与えた。しかし各社は「ライブコマース」という新たな販売チャネルをフル活用し、創意工夫を凝らした販売施策を展開、コロナの影響を最小限に抑えるべく努めている。
ライブコマースを活用し顧客との関係を深化
コロナ禍での外出自粛により、とくに路面店は大きな打撃を受けることになったが、消費者は自宅にこもって時間を持て余し、消費欲求を消化できない状況にあった。これを商機と見て、多くの小売業が注目しているのが、ネット上で映像を配信しながら商品を販売する「ライブコマース」だ。
もともと中国では19年ごろからライブコマース市場が盛り上がりをみせていて、「Tik Tok」「快手」などの動画配信プラットフォームが、タオバオ(Taobao)、京東(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)といったEC企業と業務提携を進め、ライブコマース映像をタップするだけで商品の購入、決済、自宅への配送が完了できる仕組みを整えていた。そこにコロナショックがやってきたため、ライブコマース市場は急速に成長を遂げているのである。
杭州市を中心に国内9都市で28店舗を展開する百貨店チェーンの銀泰百貨(インタイム)は、19年4月からライブコマースを開始していた。ふだんは接客カウンターに立つスタッフが出演して、自分が担当する化粧品や服飾品を紹介し、販売するというものだ。
その目的は売上ではなく、スタッフと顧客の関係性強化にある。ライブコマースを見た顧客が店舗を訪れると、出演していたスタッフが実際に店頭に立っている。顧客にとっては“顔見知り”のような距離感がすでにあるため、商品についての相談などが気軽にでき、店舗の売上増加につながっていくというわけである。
その銀泰百貨もコロナ禍で一時的に営業自粛をせざるを得なくなったが、100人いたライブコマーススタッフを一気に5000人に増やし、毎日200件以上の映像を配信。店舗は休業していても、ネットで営業している「クラウド百貨店」として話題を集め、視聴者数の合計が平常時の来店客数を上回るほどの成果をあげている。
他方、フランスのスポーツ用品専門店デカトロン(Decathlon)の北京店と瀋陽店では、アリババ(Alibaba)系の即時配送サービス「ウーラマ(Ele.me)」と提携し、商品のデリバリーに対応。室内でもできるストレッチやトレーニングなどを紹介する映像をネット上で配信し、それを見た人がスマホで商品を注文すると、最短30分で自宅に配送するというサービスを4月に開始した。ヨガマット、ダンベル、バドミントン用品など、室内や屋外の限られたスペースでも楽しめる商品が好調だという。
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