コロナ禍で買い方も売り方も激変!先進企業がすでに始めている「新しい販促」!

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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“デジマ”の領域が1つの解に

小売業のデジタル化
販促において、あらゆる小売業に共通する正解は存在しない。自店に求められていることは何かを再考することがまずは重要だ

 新しい販促策を検討するうえで注目すべきトレンドの1つは、昨今小売業界でも事例が増えているデジタルマーケティングの領域だ。たとえば、トライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長)が出店を進めている「スマートストア」。スキャナーとモニターが備え付けられた「スマートショッピングカート」は、お客自らが商品をスキャンし、専用レーンを通り抜けるだけで決済が完了する。モニターではカゴに入れた商品に合わせてクーポンを表示したり、レシピを提案したりする。また一部のスマートストアでは売場随所に大型のデジタルサイネージを設置。その広告枠をメーカーに販売するかたちで、新商品のプロモーション映像などをお客に向けて配信している。

 SM大手のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長:以下、U.S.M.H)もデジタルを活用した販促に力を入れている。今年6月にはU.S.M.Hのアプリを用いたセルフ決済サービス「Scan&Go」の本格展開を開始。お客は商品バーコードをアプリ上でスキャンし、店頭に設置されたQRコードリーダーにアプリに表示されたバーコードをかざすだけで買物が完了する。お客はレジに並ぶ必要がなく、すぐに買物を済ませることができる。また、U.S.M.Hも店頭サイネージの導入実験を行っており、新たな販促ツールとしての活用を検討している。

 トライアルもU.S.M.Hも、新しい買物体験、利便性の高い買物環境を提供することで、集客を図ろうとしている。とくにスマートショッピングカートやScan&Goが実現した「レジを通過しない買物体験」は、非接触ニーズが高まるコロナ時代において、それ自体が来店動機になり得る事例だろう。

 これら大手に限らず、中小規模のSMでも進んでいるのが専用アプリの活用だ。会員カードやチラシの“電子化”にとどまらず、レシピ提案や店舗ごとにタイムセールやイベントなどの情報をプッシュ通知(アプリを開いていない状態でもスマホ画面上にポップアップで情報が表示される仕組み)するといった方法で、販促のみならず、顧客との関係性を維持するツールとして役立てられている。店頭におけるフェイス・トゥ・フェイスでの接客やコミュニケーションが忌避されがちな今、顧客と“つながる”手段としてアプリを活用することも1つの策だろう。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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