カテゴリーフォーカス:ウイスキー、家飲み需要の拡大で大幅伸長RTDからボトルへの移行を促す施策を

ライター 石山 真紀
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ハイボールがビール類と並ぶ食中酒の定番となったことから、家庭での飲用機会も増えているウイスキー。新型コロナウイルスの影響により外食を避け家飲みをする生活者が増えたことから、さらに需要が拡大している。

ハイボール イメージ
i-stock/Mizina

居酒屋から家飲みへ4月以降は2ケタ成長続く

 近年、居酒屋での飲用経験に加え、RTDカテゴリーのハイボール缶をきっかけに、自分好みの濃さでハイボールを楽しむため、年代を問わずウイスキーを手に取る人が増えてきている。

 KSP-POSデータによると、2019年7月から20年6月のウイスキーカテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比8.8%増の5137.47円、数量PIは同8.0%増の3.75となった【図表】。月別の動向を見ると、消費税増税前の9月に駆け込み需要で大きく数字を伸ばした分、直後の19年10月は前年を大きく割り込んだものの、年末には前年並みにまで戻し、新型コロナウイルスの影響により外食から内食への動きが鮮明化した20年4月以降は、金額PI・数量PIともに2ケタ増の大幅伸長となっている。

 20年2月以降は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出制限やテレワークの推進などライフスタイルが大きく変化し、購買行動にも大きな影響が出ている。売上の傾向を見ると、通常は歳暮や年始の挨拶など、ギフト需要の高まる12月と、父の日のギフト需要が高まる6月が山場となりやすいが、今期はコロナ禍の影響を受け、居酒屋をはじめとした外食を避けて、家で酒類を楽しむ人が増えたことに起因し、4月・5月の売上も非常に高くなっている。

 数あるウイスキーの中でもとくに好調なのが、サントリースピリッツの世界No.1バーボン「ジムビーム」だ。クールでスタイリッシュな世界観のブランディングに加えて、家でも本格的な外飲み気分が味わえるジョッキプレゼントの施策も奏功し、幅広い年代の支持を集める。また、RTDカテゴリーの「ジムビームハイボール缶」も引き続き好調に推移。外飲みに関与の高い缶ユーザーを中心に新規ユーザーを獲得し、前年比2ケタ増で成長を続けている。

ウイスキーカテゴリーの金額PI月別推移

ハイボール缶からボトルへ奥行きを広げる施策を

 コロナ禍の影響によって、一気に家庭用の需要が拡大したウイスキー。「トリスハイボール缶」「ジムビーム ハイボール缶」など、RTDのハイボール缶がエントリーの取り込みに貢献しており、ハイボール缶をきっかけにおいしさを知り、ボトルを購入して自宅でもハイボールをつくるユーザーが増えている。

 最近では若年層を中心としたエントリーユーザーの増加だけでなく、一人当たりの飲用量も増えており、とくに20年春以降は外出自粛に伴い家飲みの機会が増えたことで、中・大容量品や輸入ウイスキーの需要も拡大している。

 ハイボールはビール類と並ぶ食中酒の定番としてのイメージが定着し、食と絡めたクロスMDは今後も大きな武器となるだろう。たとえばサントリーの「トリス」ブランドは日本唐揚協会とコラボレーションした「トリ&カラ」企画を実施し大きな成果を上げている。

 重要なのは外食時のハイボールの飲用経験や、ハイボール缶をきっかけにウイスキーに興味を持ったユーザーが、手に取りやすいと感じる売場をつくることだ。とくに奥行きを広げるためのハイボール缶からボトルウイスキーへの移行は、単価も大きく跳ね上がるため売場にとってもメリットは大きい。定番である割り材とのクロスMDに加えて、ハイボール缶とその元となるウイスキーを同棚でエンド展開を仕掛けることで、ウイスキー市場全体を盛り上げていきたい。

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