カテゴリーフォーカス:日本酒、コロナ禍による巣ごもり消費が追い風奥行き、価格帯ともに広がり

ライター 石山 真紀
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日本酒のマーケットは長年、横ばいから微減傾向にあったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い巣ごもり消費が伸長する中、日本酒の飲酒量も増加。大容量品による奥行きの広がりに加えて、プチ贅沢な商品を選ぶライトユーザーも増えている。

日本酒イメージ
i-stock/gyro

家でも居酒屋気分日本酒ユーザー拡大につなぐ

 KSP-POSデータによると、2019年7月から20年6月の日本酒カテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比1.8%減の9909.27円、数量PIは同1.1%減の16.47となった【図表】。月別の動向を見ると、中元のギフト需要に加えて冷夏で気温が上がらなかった19年7月と、消費税増税前の駆け込み需要があった9月は大きく数字を伸ばしたものの、直後の19年10月は前年を大きく割り込み、3月まで低迷している。

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛が鮮明化した20年4月は前年並みに戻り、5月以降は、金額PI・数量PIともに前年超えとなっている。

 売上の傾向を見ると、気温が下がり鍋物などを食べる機会が増える11月から数字が上がり、歳暮や年始の挨拶など、ギフト需要の高まる12月、1月にピークを迎えることが見て取れる。

 今期はコロナ禍の影響を受け、居酒屋をはじめとした外食業が軒並み営業自粛を行ったことで、外で酒を楽しむ機会が大幅に減少。外食機会が減ったことで内食が増加し、いわゆる巣ごもり消費が拡大。居酒屋気分で、家で酒類を楽しむ人も増えている。

 日本酒カテゴリーについてもこの傾向はみられ、とくに4月以降、大容量商品の動きが活発になるなど、奥行きに広がりがみられる。

 またもう一つの傾向として、時々日本酒を嗜む程度のライトユーザーが、巣ごもり消費の中でプチ贅沢なものを選ぶ傾向にあり、1200円から2000円程度の付加価値型の商品もよく動くようになってきている。

日本酒カテゴリーの金額PI月別推移

10月の酒税改正を見据え日本酒ならではの魅力を訴求する

 新型コロナウイルスの影響により外食の機会が減少する中、オンライン飲みを含めた家飲みのニーズは着実に増えている。そこから「家で飲むときの食卓を充実させたい」、「料理と併せてお酒を楽しみたい」といった声も出てきており、売場の提案内容によっては多くの消費者に刺さるだろう。

 日本酒は長年、中高年の男性が支えてきたカテゴリーであり、日本酒メーカー各社の基幹ブランドはそれぞれ多くのロイヤルユーザーを有している。しかし、今後マーケットを拡大していくためには、若い世代や女性といった新規ユーザーを獲得できるような商品開発や販促施策が求められる。

 とくに今年は10月の酒税法改正で日本酒の値下げが予定されており、同カテゴリーにとっては追い風となるとみられる。一方、酒類全体のマーケットを支えてきた新ジャンルやワインなどは値上げが予定されており、きっかけさえあれば日本酒カテゴリーに移行する可能性も十分にある。

 新型コロナウイルスの影響を受けて、家で日本酒を楽しむ機会も増えている。内食需要が高まる中、季節感のある演出や総菜とのコラボレーションなど、家飲みならではの楽しみ方を訴求することも重要となるだろう。ライトユーザーの獲得に向け日本酒の選び方やシーン提案、おすすめ料理など、家庭での日本酒の楽しみ方を訴求することで、日本酒のファンづくりにつなげていきたい。

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