家庭用手袋市場は、ここ数年、横ばい状態が続いているが、新型コロナウイルスの感染拡大により需要が拡大。使用用途が広がり、新たな需要につながっている。
マーケットトレンド:2019年の家庭用手袋の販売数量は微減
日本グローブ工業会によると、2019年の家庭用手袋の販売数量は、8974万9000双で、対前年比3.7%減となった。素材別では、ビニール手袋は5102万9000双で同4.1%減、ゴム手袋は2861万3000双で同4.8%減、ニトリル手袋は1010万7000双で同2.4%増となった。日常のさまざまな場面で活躍する家庭用手袋だが、10月の消費税増税の影響もあり需要が減少したようだ。
ここ数年、家庭用手袋は横ばい状態が続いているが、指先を強化したものやズレを防止したもの、着脱がしやすく使い心地を追求したものなど、高付加価値商品は堅調だ。ショーワグローブはこの秋に、ミューシリーズとタッチシリーズを「ナイスハンド」ブランドとして統一を図り、店頭での訴求力を高めている。ダンロップホームプロダクツでは、機能強化に加え、カラフルでポップなデザインの「プリティーネ」などを展開し、若い女性からの支持を獲得している。
一方、使い捨ての極薄手袋の19年の販売数量は52億6959万枚で同10.2%増となった。素材別ではビニール製が18億7931万枚で同15.7%増、ゴム製が4万9817万枚で同6.6%増、ニトリル製が18億2288万枚で同7.4%増、ポリエチレン製が10億6921万枚で同7.6%増と、全体的に好調に推移している。極薄手袋は、掃除などの従来の使い方に加え、感染防止対策として使われており、新型コロナウイルスの感染が流行し始めた3月頃から需要が急増している。
家で過ごす時間が増えたことで、掃除や炊事をする人が増え、4月以降は家庭用手袋の需要も増加。これまで手袋を使っていなかった人もこれを機会に使用するようになり、家庭用手袋市場を活性化している。
ショーワグローブ=多くの人の手を守る「ナイスハンド」ブランドとして統一
1996年に発売してから家庭用手袋市場をリードしてきたショーワグローブの「ナイスハンド」ブランドが今年リブランディングする。ナイスハンド ミューシリーズ、ナイスハンドタッチシリーズに統一したロゴを付けることで、さらに店頭での訴求力を高める。
商品特長をイラスト化してわかりやすく
ショーワグローブではこれまで、ユーザーのさまざまなニーズに対応した家庭用手袋を展開してきたが、今年「ナイスハンド」としてブランドを統一。やわらかさや丈夫さ、スベリ止めなど、基本性能を充実した家庭用手袋のスタンダード「ミューシリーズ」と、肌ざわりやフィット感などの使い心地にこだわった「タッチシリーズ」、コットン製の「手肌をいたわる手袋」を「ナイスハンド」として展開する。
ロゴは格式あるフォントを選び、手をモチーフにしたデザインを採用した。「暮らしの中で人々の手を守り続ける手袋」でありたいという思いをロゴに込めている。
パッケージもより選びやすく工夫。手袋の厚さやサイズなど重要な要素を大きく表示し、食器洗いや掃除、洗濯などの使用用途も明記した。裏面には指先の強化などの商品特長をイラスト化してわかりやすくした。また、自分の手のサイズがわからない人のために、中指の長さでサイズがわかるメジャーを付けている。
とっておきのハンドケアとしてタッチシリーズを提案
タッチシリーズはパッケージに高級感のあるマットフィルムを採用。同シリーズには「ナイスハンド さらっとタッチ」と「ナイスハンド するっとタッチ」があり、内面に特殊な繊維を採用することで、さらっとした肌ざわりを実現した「ナイスハンド さらっとタッチ」は、多くのファンから支持されている。全長35㎝の「ナイスハンド さらっとタッチ セミロング」もラインアップしており、スリム設計でフィット感を高め、裾がずり落ちないよう工夫されている。手を上に向ける掃除も裾を折れば水垂れ防止になり、使い勝手のよさで選ばれている商品だ。
また、手の小さな人や子供にも指先までフィットしやすいXSサイズを「ナイスハンドPetit」として発売してきたが、同商品はカラーを変更し「ナイスハンド さらっとタッチ」のXSサイズとして展開していく。
一方、手袋の内面にビーズイン加工でぬぎはめがスムーズな「ナイスハンド するっとタッチ」は、薄くて手にフィットする裏毛なしタイプ。素手感覚に近いので使いやすいと人気となっている。
家庭用手袋のインナーや就寝時のハンドケアに使えるコットン製の「ナイスハンド 手肌をいたわる手袋」は、裾部分が長めのため、作業中や就寝時に脱げにくく、ズリ落ちも防ぐ。伸縮性があるので手にフィットする。タッチシリーズと「ナイスハンド手肌をいたわる手袋」は「とっておきのハンドケア」として訴求していく。
「ナイスハンド」の新パッケージはこの夏から順次切り替えていく予定だ。店頭に向けては、アウト展開しやすい吊り下げ台紙を用意。台所洗剤や掃除用具などでの関連販売が効果的で、年末の大掃除に向けて、アウト展開を提案していく。
今回のリブランディングにより、ブランドの想起率を高め、より多くの人にショーワグローブの家庭用手袋を広げていく予定だ。
ダンロップホームプロダクツ=ユーザーの声を製品に反映、さらに市場の深耕を図る
ダンロップホームプロダクツは、消費者ニーズに応えるラインアップを強化している。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、手袋への注目度が高まるなか、さらなる市場深耕を図る。
着脱しやすく、ずれにくい
昨年10月、ダンロップホームプロダクツは「デイリープリーツ」を新発売した。食器洗いのほか、風呂、レンジ回りの掃除など、家庭内の幅広い作業に使える、天然ゴム製手袋である。
手首から裾にかけ、ギャザー加工を施しているため、ずれにくく使いやすい一方、着脱しやすい。ゴム特有のにおいも低減、幅広い層に受け入れられる商品に仕上げた。
同社でギャザー加工を行っている代表的なものには、ほかに「プリティーネ」がある。指先を細く加工し、さらに「レッド」「オレンジ」「グリーン」「イエロー」と多様なカラー を展開。またおしゃれな形状で、若い女性のユーザーの取り込みをねらった製品だ。
プリティーネは2010年の発売以来、そのコンセプトが受け、多くのファンを獲得。そのなか、消費者から「指先がゆったりとしたタイプがあれば」という要望が増えたのを受け商品化したのが、今回のデイリープリーツ。プリティーネのずれにくいという特徴はそのままに、つけ心地を追求したかたちだ。
パッケージには「スリムなフォルムで やさしくフィット」という、製品の特徴を表現するキャッチコピーを記した。ターゲットは、30~40歳代に設定する。
このようにダンロップホームプロダクツでは、常にユーザーの声に耳を傾け、製品づくりに反映させている。これにより幅広いニーズに応えられる、ラインアップを強化する方針だ。
ゴム手袋の需要が拡大
デイリープリーツ、プリティーネのほかにも、ダンロップホームプロダクツには魅力的な製品が多く揃う。とくにユニークなのは燃やしても有害ガスが発生しない、環境にやさしい天然ゴム製の付加価値型手袋である。
「樹から生まれた手袋 さらさらりん」はそのひとつ。「セラテックス」という素材が原料で、手にフィットしやすく、食器洗いや掃除、洗濯も楽にこなせる。特徴は、手に直接触れる裏地にナイロンを編んだ生地を使っていること。肌触りがよく、ゴム手袋とは思えない快適な使い心地を実現している。
「樹から生まれた手袋 リッチネ」も一例で、同様にセラテックス素材を使用。手荒れの原因となるたんぱく質を酵素で分解、大半を除去しているため、敏感肌の人でも安心して身につけられる。
さて今年は、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が大きな問題となっている。とくに緊急事態宣言中は外出できないため、人々の関心事は家庭内に向かった。そのなか需要が拡大したのは家庭用手袋。ダンロップホームプロダクツの製品も、今年3月以降、販売を大きく伸ばした。
ダンロップホームプロダクツでは今後も、ゴム手袋の市場深耕を図る。
ゴム手袋の価値を訴求、積極的に展開すれば、競合店との差別化にもつながり、さらなる集客効果、需要拡大が期待されている。