持続可能な農業の実現へ JAグループ福島が挑む「GAP認証野菜」の販路拡大

上林 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

JA福島中央会(福島県/原喜代志代表理事会長)とJA全農福島(福島県/菅野康徳県本部長)は9月5日、「第2回JAグループ福島GAP交流会」を共催した。東日本大震災以降、県産農畜産物の信頼回復とブランド強化の旗印として推進してきたGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)認証の取り組みを、小売・流通業界の事業者に直接発信する場だ。福島県内では、持続可能な農業の実現と、GAP認証野菜の販路拡大に向けた活動が加速している。

GAP交流会は、講演を中心とした第1部、商談も可能な第2部の2部制で実施された

GAPの情報発信、試食、商談まで一挙に

 「JAグループ福島GAP交流会」は、福島県内における食品の安全や環境などへの取り組みの発信、農産物の生産や販路の拡大を目的としたイベントだ。25年2月の第1回に続き、今回が2回目の開催となる。

 農産物の安全性を示すGAPは、農業における食品安全、環境保全、労働安全を確保する国際的な認証制度だ。生産工程の記録や点検を通じて、農薬の適正使用や異物混入の防止、作業者の安全などを保証する。近年は流通・小売企業が調達基準に組み込むケースも増え、持続可能なサプライチェーンの基盤としての位置づけが大きくなってきている。

 今回の交流会は2部制で行われ、第1部ではGAPについての専門家による講演のほか、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長)が取り組むGAPの取り扱いについて、東北地区チーフマーチャンダイザーが説明した。また、福島県内の5つのJAがそれぞれの産地におけるGAPの取り組みを詳細に解説するなど、産地と事業者の密接な情報共有が図れる場となった。

 第2部では、県内5つのJAが出展するブースにおけるGAPのPRや意見交換・商談のほか、福島県もブースを出展して情報発信に努めていた。各ブースが並ぶ部屋の中央には、「愛情しいたけの麓山高原豚肉詰めジェノバソース」「きゅうりとチェリートマトの中華風酢漬け」など、県内JAの管轄内で生産されたGAP認証農産物を使用した料理が並んでおり、事業者は実際に味を確かめ、その場で商談もできるようになっていた。

 JA福島中央会で食農振興部長を務める山田朋世氏は、「(第1回を開催した)2月は冬場で農産物が少なく、実際に見て食べてもらうことができなかった。第2回はおいしさを実感してもらうために試食メニューを設けた」と説明。「初回よりも多くの方にご参加いただいている」と、GAPの注目度の高さも体感したという。

県内で生産されたGAP認証の素材を使用した料理が会場に並んでいた

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記事執筆者

上林 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

2000年生まれ。埼玉県出身。法政大学文学部英文学科卒業後、地方新聞社の営業職を経て株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。

流通小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部で執筆・編集を行う。

趣味はお笑い鑑賞、音楽鑑賞。一番好きなアーティストは椎名林檎。

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