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ITが可能にする 爆買いなきインバウンド攻略法

2019年5月8日から10日の3日間、東京ビッグサイトにて、第28回「Japan IT Week春(後期)2019」が開催された。そうしたなか、セミナーおよび展示内容を通じ、流通小売業にとって気になるキーワードに関する動向をレポートする。第4回は、インバウンド攻略法!

増え続けるインバウンド客だが、鳴りを潜めた“爆買い”

 2018年、インバウンド(訪日外国人客数)が3000万人を突破した。2020年の4000万人目標達成に向け、着実に数字を伸ばしており、インバウンド市場も拡大を続けている。しかしここ数年は「モノ消費」から「コト消費」への変化もあり、爆買いブームに湧いた2015年をピークに一人当たりの買い物金額は減少を示している。

 インバウンド客1人当たりの買い物金額がもっとも大きいのは中国だが、2018年は2015年に比べ3割以上も金額を減らしている。

「もう爆買いはしない。以前のように、中国人客一人ひとりにぴったりくっついて売場を案内しても、売上げは伸びない」

 今回のJapan IT Weekの展示ブースの中には、中国人が中心になってデモやプレゼンを行うところがいくつかあるが、そのいずれでも同じような声を聞いた。

 そしてそれに対するソリューションとして提案しているのが、先進テクノロジーを使って、人手をかけずに中国人客に買い物をさせる方法だ。

中国人観光客には、中国の先進技術が有効

「中国人には中国の先進技術で、インバウンドを成功へ。」をキャッチフレーズに事業を展開しているイー・ビジネス

 「中国人には中国の先進技術で、インバウンドを成功へ。」をキャッチフレーズに事業を展開しているイー・ビジネス(東京都/花 東江社長)では、中国語での対応のできるスタッフや中国語のメニュー作成も不要、QRコードを用意するだけで、注文から決済まで完了できる「QR order」を提供している。

 中国最大手のSNSツールWeChat向けのMINI PROGRAMとして利用するもので、店頭のQRコードをお客が読み込めば、その店で提供するメニューが中国語で表示され、お客はそこから注文をし、決済をすることができる。店のスタッフはお客に対し、何も対応する必要がない。ただ注文品を渡すだけだ。

 日本人の感覚では、あまりにも味気ない気がするが、同社担当者(中国人)に言わせると「中国人は便利さ重視。なんでも簡単なものが好き」ということだから、この仕組みでどんどん注文していくということなのだろう。

 このQR orderは飲食店での利用シーンを主として想定して提供されているが、手間暇コストをかけずに、中国人のお客に商品を購入してもらう仕組みと考えれば、小売店での活用も可能だろう。

 

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インバウンド客への“代替え提案”で欠品ロスを防ぐ

インバウンド客への“代替え提案”で欠品ロスを防ぐ

 「日本での買い物を頼まれても、店頭でずばりその商品を見つけられればいいが、品切れともなれば、何も買って帰ることができない。日本人であれば、セカンドベストの類似品を探すことも簡単だが、海外からの旅行客の場合、現状の日本の売場ではそれは難しい。旅行客にしてみればおみやげを買えないことになり、店側としても販売機会の損失になる」

商品バーコードを利用し商品情報を多言語で表示するアプリとプラットフォームを提供するPayke(ペイク)

 商品バーコードを利用し商品情報を多言語で表示するアプリとプラットフォームを提供するPayke(ペイク)(東京オフィス/古田奎輔社長)の担当者はそう話す。

 同社が開発・提供する「Payke」は、アプリ上で商品バーコードをスキャンすると、商品情報や一般客からの口コミ情報など、買い物をする際に参考にしたい情報を、ユーザーが希望する言語で表示してくれるもの。現在、日本語、繁体字(台湾、香港、マカオ)、簡体字(中華人民共和国、シンガポール、マレーシア)、英語、韓国語、タイ語、ベトナム語の7言語に対応している。

 バーコードで検索可能な商品は、同社のプラットフォームを導入している企業のものに限られるが、取材した時点で、医薬品、食品、日用雑貨などの大手メーカー1200社以上、商品登録点数30万点以上あり、食品スーパーやドラッグストア、家電量販店などで扱う主要な商品をかなりカバーできている。

 店頭での使用シーンだが、Paykeアプリをダウンロード(現状390万ダウンロード)した一般ユーザーが自分の買い物のために使う以外に、店舗側がアプリをダウンロードしたタブレットを売場に用意し来店客に使ってもらうというケースも増えてきているという。

「海外からの旅行客が知っているブランドはカテゴリー№1が中心。Paykeを利用すれば、お目当ての商品が品切れの場合でも、その商品の横に並ぶ同カテゴリーの別商品を知ることができ、代替購入につながっている」(同)

 Paykeアプリを利用するには、性別、言語、年齢を入力する必要がある。このデータと、店頭でのスキャニングデータから、どのような属性の人が、どこで、どの商品に興味をもっているかを分析することができるが、意外な結果が出てくることもある。中国人が購入しているとばかり思っていた商品が実は韓国人に好まれていることがわかり、メーンのPOPを中国語から韓国語に変更したところ、売上げが動き始めたという事例も生まれているそうだ。