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AIカメラ1台で、「アマゾン・ゴー」並のことができるサービスが誕生!?

2019年5月8日から10日の3日間、東京ビッグサイトにて、第28回「Japan IT Week春(後期)2019」が開催された。そうしたなか、セミナーおよび展示内容を通じ、流通小売業にとって気になるキーワードに関する動向をレポートする。第3回は、AIによる来店客分析の最前線をまとめた。大手小売業だけでなく、中小食品スーパーの導入も秒読みとなっている。

1/30秒に50人を顔認証できるAIカメラも登場

 AI(人工知能)が遠い世界のテクノロジーから、どんどん身近なものになろうとしている。AIスピーカーは家電量販店やホームセンターでごく普通に販売されているし、あのレジなしコンビニのアマゾン・ゴーも一般客が利用できるようになっている。

 Japan IT Weekでも、AIをテーマとする展示が至るところで踊っていた。なかでもAIカメラによる画像認識技術を活用した来店客分析ツールは、実際の購入客しかカバーできないPOSデータと違い、「非購入客を含む来店客をより深く知ることができマーケティング活動に役に立つ」と積極的にアピールするブースが目立っていた。

 世界最高峰の顔認識を強調していたのが、イー・ビジネス(東京都/花 東江社長)の「Retail eye」。中国で開発された認識率99.9%を誇る高精度顔認証ソリューションだ。とにかく早いのが人を特定するまでのスピード。動画1フレーム(30フレームで1秒が標準的)で50人を検出できる。1秒あたり最大で1500人を認識できるのだという。

 確かに、どこのブースを見ても、せいぜい45人を認識している程度なのに対し、同社のモニターでは、数名のグループがほぼ同時にAIカメラ前を通りすぎた際に、瞬く間に全員の識別を映し出していた。さながら最近の刑事ドラマでよく見かける、渋谷のスクランブル交差点を渡る雑踏の中から、特定の人を探し出すテクノロジーのような印象だ。

 ただこれはまだ技術先行型の話で、「この技術をどうすれば実際のマーケティングに生かせるのか」という問いに対して、「たとえば、カーディーラーなどで、1カ月の間に何度もショールームの前を行ったり来たりしている人がわかれば、確度の高い見込み客としてアプローチできる」との答えだった。

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カメラ1台で、アマゾン・ゴー並のことができるサービス!?

カメラ1台で、アマゾン・ゴー並のことができるサービスも誕生!?

来店客の追跡分析を可能にするソリューションの開発を進めているFocusWEB

1台のカメラで“人間の目”のような処理をする」をコンセプトに、来店客の追跡分析を可能にするソリューションの開発を進めているのがFocusWEB(埼玉県)だ。

 顔と人体と動き(腕や足の動き、視線のジェスチャー認識など)から人物を特定し、そのデータを一度認識させておけば、カメラからフレームアウトし、店舗を移動してもトラッキングが可能になる。画像はデータとして保存せず、すべて数値に置き換えているため、プライバシーの問題が生じる心配も少ない。データはクラウド上で保管しており、たとえば同じチェーン内で、勤務先の最寄にあるA店、自宅近くのB店、外出先で立ち寄ったC店での行動を同一人物のものとして把握することもできるのだという。

 このシステムの魅力のひとつがコストだ。ソフトウェア側ですべて解析するため、カメラは市販の安価なものを使用でき、店舗面積1000坪程度で、カメラを2030台を設置した場合、ランニングコストは一人の人件費ほどで済むという。ただし初期の導入コストとして1台あたり2030万円が必要になる。

「技術的にはカメラ1台で、アマゾン・ゴー並みのことができる」(担当者)レベルにあるそうだ。また、すでに自動販売機の購買動向分析システムとして実用化も進んでいる。設置場所や時間帯ごとの利用者、定期的な利用者と初回のみの利用者との購買行動の差、商品選択までの時間などを測定し、購買者分析を行うものだ。

 現在同社には、上場企業を含むスーパーからの引き合いが増えているという。

「ここ12年で変化を感じている。とくに地方の中堅スーパーがAIの開発に本格的に取り組もうとしている姿勢がはっきりしてきた」(同)

 

松源も利用する、来店客の属性、行動分析サービス

カメラに映った来店客の個人属性や、店内の行動、来店人数などをAIがリアルタイムに分析するソリューションを提供するGMOクラウド

 国内シェア№1のセキュリティサービスをもつGMOクラウド(東京都/青山満社長)でも、「Diversity Insight for Retail」として、カメラに映った来店客の年齢・性別・ファッション(渋谷系か、無印のようなナチュラル系か)などの個人属性や、店内の行動、来店人数などをAIがリアルタイムに分析するソリューションを提供している。

 パルコグループでは、イベントブースで採用し来場者分析に活用。クックパッドが展開する生鮮食品EC「クックパッドマート」では、受け取り専用の生鮮宅配ボックスの利用者分析に活用し、年齢・性別・ファッション・ライフスタイル・時間帯ごとの人数・男女比・滞在時間などの個人属性と行動分析を行っている。

 また、和歌山、奈良、大阪で「スーパーマツゲン」を展開する松源は花見シーズンのディスプレイの効果検証に使用し、店舗スタッフの感覚だけに頼らない、データに基づく「買いたくなる売場づくり」に生かしていくという。

 このDiversity Insight for Retailは、店全体の来店客分析というよりも、販促コーナーといった限られたスペースでの活用実績を前面に打ち出している。「いかに特異性のあるデータを取得できるか」に重きを置くため、こうした提案が多くなるのだという。

「後発サービスだが、問い合わせが増えている状況」(担当者)だそうだ。