メニュー

実践ウェザーMD #5 21年3月は低温傾向の時期あり、ホットメニューの扱いに注意!注目カテゴリーは?

本稿では今後毎月、主に流通小売企業本部(営業企画担当部署)の皆さまに向け、計画立案の参考にしていただくことを目的に、気象庁の発表する「3か月予報」の中でも最も未来(3カ月目)の予報をベースにした、ウェザーMDの実践方法についての考え方を示していきます。今回は、気象庁が2020年12月25日に発表した3か月予報をベースとした、2021年3月のウェザーMDのポイントを解説します。春シーズンのスタートの時期ですね。

2020年3月の天候

 まず、前年(2020年)3月の天候を振り返ります(図表①参照)。2020年3月は、北日本から東日本を中心に記録的な高温となりました。天気変化パターンはおおむね例年どおりでしたが、低気圧の通過するコースなどの関係で日本付近は南からの暖かい空気が入りやすかったのが高温の要因です。月の半ば頃、上空に強い寒気が南下したものの一時的でした。

 また、全国の気象台のうち約4分の1で、3月としては観測史上1位あるいは1位タイの高温を記録しました。なお降水量はおおむね平年並の地域が多かったのですが、北日本の太平洋側では平年よりかなり多くなりました。付近で低気圧が急速に発達して荒れた天気となることがあったためです。

図表① 2020年3月の天候振り返り(上:気温、中:降水量、下:日照時間)

 2020年3月の、特筆すべき天気に関する出来事は図表②のとおりです。客足あるいは販売動向に影響していると思われるものもあります。実績データの検証をされる際、あるいは前年のデータをもとに今年の予算を立てる際など、参考にしてください。

図表② 2020年3月の天気に関する特筆すべき出来事

2021年3月の予報

 次に2021年3月の予報のポイントをまとめます。3月は図表③、④のように、

・関東甲信・北陸から九州にかけての地方では平年並
・北海道では平年並か高め
・東北地方では平年並だがブレるとすれば高温方向に
・沖縄・奄美地方では平年並だがブレるとすれば低温方向に

 という予報になっています。

図表③ 2021年3月の全国平均気温予想
図表④ 2021年3月の全国降水量予想

 降水量は近畿以西の太平洋側で平年並か少なくなる可能性が示唆されていますが、基本的には全般におおむね平年並という前提で計画を組んでいただくとよいかと思います。

2021年3月、ウェザーMD上のポイント

 3月は18年から20年にかけて3年連続で全国的な高温となりました。寒気の南下が少なく、時期によって気温が大きく上下することもあまりなかったため、比較的穏やかだったのが特徴です。

 それに対して、今年はほぼ平年並となる予想です。3月の気候は「三寒四温」と表現されます。ずっと高温傾向/低温傾向が続くわけではなく、気温が高い日、低い日が繰り返され、月間のトータルでデータを振り返ると平年並となる、と考えていただくとよいでしょう。

 つまり、ここ3年とは少し異なる販売動向を想定しておくべきです。具体的には以下のような可能性です。これらの項目への対応策を考え、準備しておくことをおすすめします。

☆直近3年に比べると気温上下の波が大きく、寒暖差が激しい
→高温傾向の時期と低温傾向の時期で臨機応変にメリハリの効いた売場づくり、商品提案を行うといった柔軟な対応力が求められます。

☆この時期は春夏物の販売数の伸びが例年よりやや鈍くなる
→夏物商品の動きが鈍いことを想定した販促方法を考えたり、代替提案商品を用意したりといった準備が有効です。

☆低温傾向の時期があり、ホットメニューのニーズが一時的に戻る
→早い時期に冬物商品(ホットメニュー)の在庫を圧縮しすぎないよう、直近に発表される1か月予報などを参考にしながら在庫管理を行うと良いでしょう。

☆桜の開花は、極端に早かったり遅かったりすることは考えにくい
→当地での桜の開花平年日を把握し、開花平年日以降2週間程度が花見のピーク期と仮定した計画を立てると良いでしょう。

2021年3月の注目カテゴリ

 以上のポイントを踏まえつつ、3月の注目すべきカテゴリのうち2つを代表例として、データとともに示したいと思います。

①コーヒードリンク

 季節の進みとともに本格的に気温上昇が始まる3月、気温上昇に反応して購入数の増加が期待できるのは飲料全般です。ここではその代表カテゴリとして「コーヒードリンク」のデータを取り上げます。

図表⑤ コーヒードリンクの気温と買物指数の関係(2019年及び2020年の1~7月)

 図表によると、最高気温がおおむね14℃以下の温度帯であれば、気温上下による購入数の増減幅もそれほど大きくありません。ですが、14℃以上の温度帯では気温上下による購入数の増減が大きくなります。最高気温が日々14℃を超えるようになる時期、すなわち最高気温の平年値が14℃を超えるのは、関東以西の太平洋側であれば3月中旬~下旬頃です。

②インスタントスープ

 2021年3月は高温の時期ばかりでなく、時折寒の戻りに見舞われる可能性が考えられます。そこで、この時期気温が低く寒く感じる日に購入数が大きく伸びるポテンシャルのあるカテゴリを把握しておきます。

 実際に寒の戻りが予想される場合は、売場を広げると良いとでしょう。冷えた体を温めるために手軽に飲めるホット飲料がその典型例です。ここではその代表として「インスタントスープ」のデータを示します。

図表⑥ インスタントスープの気温と買物指数の関係(2019年及び2020年の1~7月)

 図によると、3月、コーヒードリンクの例にならって最高気温が14℃前後と仮定すると、それより5℃低ければ購入数は約20%増加し、5℃高ければ購入数は約20%減少します。時期的には緩やかに店頭在庫を圧縮していく頃でしょう。過度な在庫圧縮による欠品は回避したいところです。

 気象庁から発表される予報のうち「3か月予報」について、「予報内容は必ず確認するものの、流通小売業の具体的な業務の流れの中に組み込まれていない」というケースが多いのではないかと思います。

 確かに、日々の天気予報や週間予報に比べると、「3か月予報」は予報精度が低く、またその予報内容も多少抽象的で判断しにくいのは事実です。本稿では、その悩みを少しでも解決できることを目指しています。「3か月予報」を業務の中でより実践的に活用するために参考にしていただければ、流通気象コンサルタントとしてこの上なき幸せです。

※抽出データ
株式会社True Data「ドルフィンアイ」(業態:スーパーマーケット)に搭載されている週次の買物指数(来店者100万人当たりの売上の意味を示す独自の指標)。抽出期間は2019年1月7日~2019年8月4日及び2020年1月6日~2020年8月2日(データ抽出日:2021年1月12日)。
(全国食品スーパーマーケットのPOSデータをもとに統計化した購買データで集計しています。データには店舗・個人を特定する情報は含まれていません)

※ご利用にあたっての注意事項
ここで掲げた注目アイテムは、長期予報の内容に基づいてピックアップしたものです。実際の天候が予報と大きく乖離し、ここで着目したような販売動向にならない場合があります。また、気象要素と購入数の関係から求めた需要予測モデルによる需要シミュレーションですので、気象以外の大きな要因による販売動向の影響は含まれていません。