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給与が高いのはあのチェーン! 上場食品スーパー平均給与ランキングを一挙公開

国税庁が2022年9月に発表した「民間給与実態統計調査」(令和3年)によると、2021年の給与所得者の平均年収は443万円(対前年比2.4%増、10万2000円の増加)となっている。また、業種別の平均給与は「卸売業・小売業」は377万円であった。
近年は新型コロナウイルスの影響による内食需要の増加と特需、ウィズコロナとなった現在はネットスーパーや宅配、非接触決済の導入拡大など顧客の消費スタイルの変化対応に加え、世界経済情勢の変化によって原料やエネルギー価格が上昇し、コスト圧力が増すなど、厳しい状況に置かれている小売業界。このような状況における上場食品スーパー企業26社の平均給与および業績、動向を概観する。

SB/iStock

持ち株会社以外ではヤオコーがトップ

 上場食品スーパー26社が有価証券報告書で公表している平均給与のランキングを図表で示した。上位の顔ぶれをみると、「リテイリング」「ホールディングス」といった持ち株会社が名を連ねているのが目を引く。持ち株会社の場合、グループ本社や統轄部署、管理部門などの社員のみが在籍するケースが多く、そのため平均給与が引き上がる可能性が高いことを留意する必要がある。

 ランキングを見ていこう。1位は中四国地方で店舗展開しているフジ(愛媛県)の808万円だった。同社はもともと中四国で食品スーパー・総合スーパー(GMS)を展開していたリージョナルチェーンだったが、18年にイオン(千葉県)と資本業務提携を締結。その後22年3月に、マックスバリュ西日本(広島県:19年にマルナカおよび山陽マルナカと経営統合)と、フジ・リテイリング(愛媛県:フジの小売事業会社として設立)を束ねる持ち株会社に移行している。さらに24年3月をめどにマックスバリュ西日本と経営統合して新会社が設立される予定だ。

 こうした経緯を踏まえ、本稿ではフジを食品スーパー企業として分類している。ちなみに同社は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の調査による22年度の上場食品スーパーの営業収益ランキングでも1位となっている。

 2位はマルエツ(東京都)、カスミ(茨城県)、マックスバリュ関東(東京都)を傘下に抱える首都圏の食品スーパー連合であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)で、800万円だった。

 以下、3位は原信(新潟県)、ナルス(同)、フレッセイ(群馬県)などを抱えるアクシアル リテイリング(新潟県)で751万円、4位は食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、スポーツクラブなど多角的な経営を展開しているバローホールディングス(岐阜県)で675万円だった。

 5位は、非持ち株会社のヤオコー(埼玉県)であった。優良スーパーとして知られ、業績でも34期連続の増収増益という類を見ない成長を遂げている同社。2023年2月期の平均給与は595万円と、実質的に平均給与が最も高い食品スーパーといっても過言ではない。今後も業界を牽引する企業として、順調な成長と給与バランスが注目される。

6位以下のランキングは!?

 以下、6位は北海道食品スーパー連合の持ち株会社であるアークス(北海道)が568万でランクイン。7位には、東海・中部を中心に店舗展開するマックスバリュ東海(静岡県)が564万円と事業会社としては高水準の平均給与で名を連ねている。

 5位のヤオコー以下、14位のオークワ(和歌山県)までの10社は平均給与が500万円以上となっており、冒頭で述べた国税庁が発表している平均給与を大きく上回っている。

 顔ぶれを見ていくと、9位のマミーマート(埼玉県)、10位のいなげや(東京都)、11位にライフコーポレーション(大阪府)、12位のヤマナカ(愛知県)、13位のベルク(埼玉県)など、東京を中心とした首都圏、大阪、名古屋といった大都市で店舗展開している企業が目立つ。

 15位のダイイチ(北海道)から25位のハローズ(広島県)までの11社が400万円以上の平均給与となっている。なお、26位のリテールパートナーズは273万円と25位と比べて150万円近い差があるが、リテールパートナーズは丸久(山口県)、マルミヤストア(大分県)、マルキョウ(福岡県)などを傘下に抱える持ち株会社で、かつ、在籍する9人全員が子会社からの兼務出向者となっている。有価証券報告書で開示している平均給与は、持ち株会社社員の「給与の一部」と考え、参考数値として参照されたい。

 これらを踏まえると、本ランキングで掲載した上場食品スーパーの平均給与は、国税庁発表の業種別平均給与を大きく上回っているといっていい。ただ、国内の食品スーパーは中小チェーンがひしめく非寡占化市場であり、本ランキングが対象としている上場食品スーパーは市場全体から見れば“少数派”の大手チェーンであり、そのぶん平均給与も高いことを付言しておきたい。

 世界的なインフレの加速によって、コスト高が顕著になり、厳しい状況にある小売業界だが、エッセンシャルワーカーである食品スーパーの現場で働く従業員の平均給与を業界全体としてアップさせる経営努力が、より便利で顧客満足度の高い企業・店舗運営に必要となるだろう。