株式会社東急ストア
デジタルマーケティング部 店舗戦略担当部長
西野 浩 氏
商圏内「ファンづくり」を目指したマーケティングとデータ活用
東急ストアの主力商圏は東急線沿線であり、2035年までは人口増加が続くと予測されている。比較的、恵まれたマーケットをドミナントとしている。しかしながら、商圏内の競争環境は激しさを増している。同業に限らず、飲食やドラッグ、ECなどの進出は、他のエリア以上に激しいものになっていること、店舗規模も大きくないことから品揃えやサービスも制限ある中で選定していかなければならないこと、顧客ニーズの多様化、高まる鮮度・品質・健康ニーズへの対応、人件費等のコスト高騰など、課題が山積している。今後、いかなる状況でも勝ち残るために、お客様とデジタル接点を持つことがマーケティングを推進する上で重要であると考えている。
「ファンが多い企業」をマーケティング目標として掲げている。①消費者との接点づくり ②消費者の理解・分析 ③商品・サービスの価値伝達と購買促進 ④データ・接点のメディア化の4つの施策で持続的なマーケティングを展開している。
東急・楽天のWポイント&LINE・楽天アセットの活用
「消費者との接点づくり」では、東急ポイントおよび20年9月より導入した楽天ポイント、さらにLINE公式アカウントや楽天の各種アセットも活用している。楽天ポイントの導入によって若年層など、東急ストアの将来顧客の獲得が進んでおり、LINEの活用によってお客様とのより深い関係・接点づくりが強まった。
今年度は、マーケティング力・売上力を高めるためにLINE連携をさらに推進し、東急・楽天のWポイント会員を増やすという目標を掲げている。具体的な施策として、5月10日よりLINE内での東急・楽天ポイントカードである「TOKYU POINT CARD on LINE」をスタート。一回のレジスキャンで東急・楽天のWポイントを獲得できるようにした。
会員を10のクラスタリングによって分類して分析、顧客理解を深める
「消費者理解・分析」については、主に7つのツール・データを使い分けている。商圏の把握、競合とのギャップ分析を行った上で、東急ストアのファンであるお客さまは誰で、そのニーズは何かを理解し、強みや守るべき領域、差別化すべきMDを明確化している。ID-POSデータは外部企業と連携し、購買ニーズを10のクラスタリングによって分類して分析。自社の強み・ポジショニングや商圏内でのポテンシャル、攻めるカテゴリーの確認に活用している。さらに、商圏内でよく買われるカテゴリー・単品を分析して棚割りや商品の改廃に活かしている。
他にも会員のインサイトを把握するために会員IDを元にしたNPS(ネット・プロモーター・スコア)調査を2020年より導入している。顧客分析と組み合わせ、お客さまが望むことを見える化し、東急ストアに対する「期待と評価ギャップ」を確認することで、営業活動に役立てている。
“朝獲れ魚”の販売はリアルタイムで情報配信し価値を伝達
「価値を伝え、購買行動を促進する」取り組みとして、今年度は「期待を超える鮮度・品質」「食での健康サポート」に注力する。たとえばJR東日本の新幹線輸送を使い、北陸・富山県の朝獲れ魚の販売を始めた。輸送中から店舗販売までLINEでリアルタイムに情報配信をした結果、大盛況となった。また、ブランド養殖魚のブリの情報配信では、18万人のLINE友だちのうち、約60%の11万人が開封し、商品購入が配信前の1.7倍に跳ね上がった。このように商品価値やストーリーの情報伝達にも力を入れ、仕入れと販売を一体化した取り組みを進めている。
その他、個店ごとの良い取り組みや売場づくりを水平展開するために「Postfor」という画像共有サービスを活用している。各店舗自慢の売場を携帯で写真に撮り、その情報をアップする。「いいね!」やコメントも従業員同士でやり取りできるため、売場展開レベルの向上につながっている。
顧客接点のデータ分析ではメーカーとの協業を拡大する
「データ・接点のメディア化」については、メーカーと協業しながら東急会員様へのLINEアカウント活用、楽天会員様への楽天アセット活用を実施している。企画ごとの最適なターゲティングに加え、メディアの閲覧と商品購入については、ポイントカードのレジ提示データを元に計測。検証型のマーケティングを実施することで、販促・広告の効率化や商品コンセプトの改善に役立てている。
今後も地域のお客さまに持続的にご利用いただき「ファン」になっていただくために、東急ストアにしか提供できない価値(強み)づくりに磨きをかけるとともに、今後の環境変化への対応力を強化し、安定的に事業継続できる取り組みを強化していきたい。