あなたのお店は大丈夫? 2022年4月に全面施行される「改正個人情報保護法」が小売業界に与える影響とは

神田一政(㈱フェズ 広報室室長)
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小売企業が抱えるデータ管理体制の課題

 これらの個人データを取り扱うには専門的な知見が必要となるが、小売事業者においてはそうしたノウハウや対応体制の整備が進んでいないのが実情だ 。また、個人情報の管理を経営課題の1つとして捉えていながら、何から着手すればよいかがわからない、あるいは日々の業務に追われるなかで十分な対策を打ち出せていないケースも多いように感じる。

 個人データを適法かつプライバシーに配慮しながら活用していくためには、顧客のデータを扱うマーケティング部門だけで完結することはできない。まずは、企業内のデータガバナンスやデータフローを可視化して、自社で取り扱うすべての個人データの取得・管理・利用・提供の現状の体制について把握することが重要だ。

 そして、個人情報保護法違反やプライバシー侵害となり得るリスクがないかなどを評価・分析し、障害となる課題をすべて洗い出した後、個人データを適法かつプライバシーに配慮して活用できる基盤とルールをつくっていくことが必要となる。

 しかし、小売事業者においてこのような取り組みを推進するためには、自社のリソースだけで対応することは難しいだろう。ID-POSデータなどの利活用を実現するためには、個人情報やプライバシーリスクに強い弁護士、データの構造を整備・運用するエンジニアやデータのセキュア(安全)な管理を実現するセキュリティエンジニア、ID-POSデータの分析を踏まえて小売事業者の収益化の施策を提案できるコンサルタントなど、それぞれの専門家の知見が必要である。

適法に対応するためには外部リソースの活用も選択肢に

 ただ、この体制であっても、それぞれの専門領域が異なるがゆえに、シームレスな課題解決が難しいといった問題が発生する可能性もある。このため、それぞれの専門領域を架橋し、小売事業者における有益かつセキュアなデータ利活用を総合マネジメントする存在が重要となる。

 そこで選択肢の1つとなるのが、それぞれの領域で専門知識を持ち合わせる外部機関に個人情報の管理業務を委託するというものだ。近年個人情報保護の重要性が増すなか、小売企業向けに、プライバシー対策の支援サービスを提供する企業も現れている。

 筆者が勤務する㈱フェズもその1つだ。もともとはリテイルテック領域を主軸に、小売業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきた企業だが、21年2月に、データ利活用・サイバーセキュリティ対応支援事業を行う外部企業と業務提携し、小売事業者に特化したプライバシー支援サービス「Urumo PrivPro.」の提供を開始した。

 いずれにしても、改正個人情報保護法の全面施行を来春に控えるなか、小売事業者は対応を急がなければならない。自社が扱うデータの内容と、その管理・提供体制をあらためて整理する必要がある。

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