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「食品ではなく食事を売る」光洋×マルコメが開いた発酵食品の新しい売り方

光洋は「発酵フェア」を2021年から継続的に実施している。部門横断型の売場づくりで、発酵カテゴリーの認知拡大および購買促進を図るだけではなく、販促の枠を超えた定番売場まで影響は及び、日常的なおいしい健やかな食事を提案する。

この記事のキーポイント

  • 部門を横断した企画である「発酵フェア」の実施により、特に糀甘酒や塩糀など発酵食品の売上が大幅に伸長している。
  • マルコメとの提案会を通じて、経営層から店舗担当者までが同じテーマとメニューを共有でき、部門間の連携の壁を突破している。
  • フェアの企画を通じて「食品ではなく、食事を売る」という意識が従業員に浸透し、定番売場でも旬食材との組み合わせ提案が広がる変化を生んでいる。

発酵フェアが拓く、企画と売場づくりの新潮流

 発酵食品は、グロサリーや日配など複数の部門にまたがるため、棚の責任主体が分かれ、売場提案が難しいカテゴリーのひとつだ。こうした状況下、「発酵フェア」は、部門横断型の売場づくりを実現し、発酵食品全体の底上げに成功した。

 1973年創業の光洋は2府2県で計74店舗(2025年9月現在)を展開するスーパーマーケットチェーン。「驚きと発見がある売場」をコンセプトとした付加価値型の売場づくりを実践している。

 「発酵フェア」がスタートしたのは2021年。以前より生鮮売場での関連販売を実施していたが、コロナ禍で消費者の健康志向が高まったことをきっかけに、おいしく、健康的に、手軽な存在として、糀甘酒や塩糀といった発酵食品を軸とした販促企画が立ち上がった。

「発酵」や「糀」をテーマに時短・簡便・健康感といった生活者ニーズに寄り添ったメニュー提案を中心にチラシで訴求(左:2023年 右:2024年)

 光洋のチラシは一風変わっている。単なる商品告知やメニュー提案にとどまらず、読み物として楽しめる紙面構成で、食のストーリーを伝えるコンテンツとして機能している点が大きな特徴となっている。気づきや学びがあるからこそ「食品の提案にとどまることなく、食事への影響が大きい」と光洋 田中氏も手ごたえを感じる。

企画が点から線に—定番売場に広がる“食事を売る”発想

 通常、部門横断型の企画は、社内調整の難しさがつきまとう。この課題を解決したのがマルコメの提案会だ。年2回、新商品や市場動向に合わせた企画提案を試食と共に行い、小売担当者と意見交換をする。光洋としては「同じテーマに沿って同じメニューを上層部、部門責任者、店舗担当者などが一同に試食しつつ、意見を言い合える環境はほかになく、有効活用したい」と20名以上が参加していることが部門横断の壁を突破できている要因だという。

 この提案会はマルコメにとっても、全部門の関係者と交流が生まれるなど、部門横断型のフレキシブルな提案が可能となっている。

㈱光洋 マーケティング部 部長 田中 孝明氏(前中央)
コーディネーター部 部長 松田 達也氏(前左)
コーディネーター部 玉置 高志氏(前右)
マルコメ㈱ 関西支店 副課長 勝見 吉信氏(後左)
マルコメ㈱ 関西支店 西片 健登氏(後右)

 「発酵フェア」で最も注力したのが、チラシ内容と売場との連動性だ。店舗サイズに応じたモデル売場の設計や展開計画書の作成により体系的な売場づくりを進めたほか、アプリによるクーポン配信や、動画コンテンツ「おいしさチャンネル」を活用したレシピ提案など、デジタル施策も積極的に導入した。

 実施店舗数は都市型小型店を除く70店舗弱。フェアを通じ発酵食品カテゴリー全体の売上が底上げされ、特に「糀甘酒」「塩糀」カテゴリーが好調に推移し、24年実績は前年同期比158.3%と大幅に伸長した。またフェア終了後も店舗担当者まで「食品ではなく、食事を売る」という意識が浸透し、旬食材との組み合わせ提案が広がるなど、普段の定番売場にも変化が広がったという。

年々進化する「発酵フェア」が「糀フェス」へ

 5年目を迎えた「発酵フェア」は年々進化しており、24年には「糀フェス」として新たなスタートを切った。実績も着実に積み上げており、今後の成長が期待される。課題は売場完成度のばらつきや、情報発信の精度向上。展開計画は整ってきたが、実際の売場の完成度に差があることから、モデル売場の画像を事前共有し、店舗ごとのサイズに応じた展開計画を策定することで、統一感のある売場づくりをめざす。

チラシと連動したPOPを用意し、青果、鮮魚、精肉売場で糀フェスの売場を展開

 光洋とマルコメの事例は、発酵食品というカテゴリーの可能性を広げるだけでなく、全社員の意識統一による独自文化を根付かせることで、部門横断型の日常的な定番売場の改革を実現する実践モデルとなるだろう。光洋とマルコメでは今後も、消費者との接点を深めながら、糀を軸とした発酵食品の可能性を広げていきたいとしている。

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