RELEXソリューションズに聞く、AIが導く小売業の次世代最適化とは
2025年6月3日から5日、シンガポールで開催されたアジア太平洋地域最大級の小売業界イベント「NRF Retail’s Big Show ASIA PACIFIC (NRF 2025 APAC)」。世界中のリテールテック企業が集結する中、統合計画プラットフォームを提供するRELEXソリューションズのブースで、同社の担当者にインタビューを実施。
AI活用が新たなフェーズに入る中、日本の小売業が直面する課題と未来への展望について話を聞いた。
―現場のリアルな課題に応える「対話型」ソリューション
NRF 2025 APAC出展内でも、特に、活気に満ちたRELEXソリューションズのブース。
そこでの商談スタイルは、決まったデモを流すのではなく、顧客一人ひとりの課題に耳を傾けることから始まる。「お客様の関心事は、サプライチェーン、価格設定、棚割と多岐にわたります。我々は、その課題に合わせてカスタマイズした解決策を対話の中から提案しています」と日本カントリーマネージャーの福沢 勇貴氏は語る。
左:日本カントリーマネージャー 福沢 勇貴氏
右:ソリューション戦略ディレクター 藤原 尚之氏
顧客が抱える悩みは切実だ。人材不足を背景とした「勘と経験からの脱却」、機会損失と過剰在庫という二律背反を解消する「在庫最適化」、そして原材と仕入価格が高騰する時代における「顧客に受け入れられる価格設定」など、複雑に絡み合った課題を解決するソリューションが求められている。
―RELEXの強み:小売特化のAIと揺るぎない実績
これらの課題に対し、同社は今回の展示会で、「小売業界の生産性をいかに高めるか」をテーマに、小売計画の統合、そしてAIの活用の二つを中心に訴求している。
まずは小売計画の統合、具体的には、サプライチェーンとマーチャンダイジングの連動だ。発注・補充といった商品供給側の計画と、販促・価格戦略・店舗計画といった顧客接点側の計画は、本来密接に連携すべきものだ。しかし、実際には組織の縦割りやシステムのサイロ化によって、それぞれがバラバラに運用されていることが多い。
RELEXはこの分断を解消し、需要予測、発注、販促、価格設定、棚割といった小売業の主要業務を統合するプラットフォームを提供している。
RELEXの統合ソリューションでは、たとえば販促計画を需要予測に正しく反映させたり、棚割変更を踏まえて発注量を最適化したりといった、部門横断のシームレスな計画と実行が可能になる。
競争の激化と人材不足が進む中、限られたリソースで素早く意思決定し、実行に移すためには、こうした計画業務全体の統合と自動化が、今後の小売業にとって大きな武器となるだろう。
そして二点目はAIの活用だ。
「RELEXのAIは、機械学習の黎明期から進化を続けています。長年、小売業に特化してきた経験を元に、店舗や販売チャネルによって異なる需要の変化を、販促や地域のイベント、季節性などを加味して、SKU別かつ店舗・拠点別に詳細に捉えることが出来ます」とソリューション戦略ディレクターの藤原 尚之氏。
その自信は、セブン-イレブンをはじめとするグローバルでの多様な導入実績に裏打ちされている。コンビニから大型スーパー、専門店まで、あらゆる業態の課題解決で培った膨大なデータと知見が、同社の最大の強みとなっている。
RELEXのAI活用は、大きく2つの領域に分かれる。ひとつは「専門AI(Specialized AI)」で、これは需要予測や在庫最適化など、業務に特化した機械学習や最適化アルゴリズムを指す。もうひとつが「生成AI」で、自然言語処理を活用し、ユーザーの指示に応じて情報を検索・分析・提案するAIアシスタントである。
「専門AIは需要予測や販促計画など、すでに当社のプラットフォームに搭載されており、世界中のお客様にご利用頂いています」と藤原氏は語る。業界の課題に特化した実績のあるAIをすぐに活用できることが、RELEXのようなSaaS型のプラットフォームを活用する大きな利点だ。
AIは「分析」から「実行」へ 仮想コンサルタントが業務を支援
さらに、AI活用は次のステージに進んでいるという。
それは、単にデータ分析結果を示すだけでなく、AIが「次に何をすべきか」を能動的に提案する「エージェント型AI」だ。ここで鍵になるのが生成AIである。
「例えば、担当者がAIと対話しながら、『今週、コーラの価格を5%下げたら売上と利益はどう変わる?』と問いかけると、AIがシミュレーション結果を提示します。それに基づき、その場で発注量を調整し、販促予算を決定する。AIが仮想秘書や内部コンサルタントのように機能し、担当者の意思決定から実行までをシームレスに支援する世界を目指しています」と藤原氏は続ける。この仕組みは一部でパイロット導入が始まっており、統合プラットフォームがもたらす価値をさらに高めていくという。
―成功への道筋:全体最適と部分最適の賢いバランス
高度なソリューションを前に、「どこから手をつけるべきか」という悩みも聞かれる。それに対して、「全体最適は目指すべきですが、プロジェクトの長期化を避けるため、部分的な改善から始めて段階的に成果を出すアプローチが現実的です」と福沢氏は語る。
ただし、サプライチェーンに関しては、部分的な検証では本質的な効果が見えにくいため、一定のスコープで全体像を捉えて進めることが重要だと指摘。プロジェクトの特性を見極め、最適なロードマップを描くことの重要性を強調した。
―日本市場への期待
最後に、日本の小売業のポテンシャルについて尋ねると、力強い答えが返ってきた。「日本のオペレーションレベルは世界的に見ても非常に高く、APAC市場をリードできるポテンシャルがあります。このイベントでグローバルな潮流や勢いに触れることが、日本の皆様が次の一歩を踏み出す良い刺激になるはずです」
成熟市場だからこそ、より精緻な最適化が求められる日本の小売業。RELEX社が示すAI活用の未来像は、その課題解決に向けた力強い解となる可能性を秘めている。
左 :リヴァンプ 執行役員 SCM&ロジスティクス 安藤 大祐氏
右上:RELEXソリューションズ 日本カントリーマネージャー 福沢 勇貴氏
右下:元Coles アドバイザー Brock Newell氏
RELEXソリューションズは、「日本の小売業界における変革」をテーマにしたランチミーティングを開催した。冒頭では、APACバイス・プレジデントのRod Talbot氏が流ちょうな日本語で挨拶を行い、続いて日本カントリーマネージャーの福沢 勇貴氏が、日本市場における変革の方向性を示した。
日本の小売業は、人口減少や仕入原価の高騰、業態の垣根を超えた競争の激化など厳しい環境に置かれているが、そのような逆境はむしろ「変革の機会」になりうると強調。オーストラリアやスウェーデンのセブン-イレブンの事例に触れながら、統合サプライチェーン構築による在庫削減や欠品の回避、販促の最適化による利益の向上など、具体的な変革のテーマとアプローチについて解説した。
RELEXソリューションズとのパートナーシップを締結したリヴァンプ社の執行役員であるの安藤 大祐氏は、提携に至った背景を説明した。「2024年のNRF APACでRELEXの福沢さんと藤原さんに出会い、ソリューションの技術力と日本における事業計画および推進力に魅力を感じて2025年2月に正式提携を結びました」
日本の小売業が抱える「人手依存」や「現実的な改善志向」といった特性に対し、RELEXの柔軟なAIと高精度な予測技術が有効であると判断した。今後は、リヴァンプがRELEXの技術を活用し、日本企業の業務改革と競争力強化を支援する方針である。
最後に、RELEXのユーザー企業の一社であるColesでの経験を持ち、インダストリー・アドバイザーであるBrock Newell氏が、グローバル小売の知見をもとに、今後注力すべき変革のポイントを講演。戦略的な棚割、データを活用した迅速な意思決定、そして適切なパートナーとの連携が成功の鍵であると述べた。
本イベントは今回のNRF APACで唯一の「日本のお客様限定のセッション」ということもあり、多くの日本企業が参加。活発な質疑応答も飛び交う中で、RELEXへの注目度の高さが伺えるものとなった。
さまざまな課題に直面する日本の小売企業、RELEXの豊富な知見と技術が業界の進化を加速させてくれることに期待したい。
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