小売企業の収益性を高めるAIを活用したパーソナライゼーション5つの手法とは

2025/04/14 15:00
dunnhumby Japan マネージングディレクター アレックス・シャベルニコヴ
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ダンハンビーメインイメージ

個別化という素晴らしい単語

 私が日本に来てから早いものですでに14年になりました。その間、日本語を習得する上で特に力を入れてきたのが漢字の読み書きです。複数ある音読みに悩まされたり、画数が多いとバランスよく書くことが難しく、ときにはひらがなの読みを間違って記憶していたためPC変換で出てこなかったり、なかなか手ごわい相手ながらも、一般的に私は漢字の学習を楽しんでいます。とくに、英語やカタカナだと長い単語が漢字で短く表現できた時、漢字は本当に便利だなと感動を覚えます。

 そんな意味で、「個別化」は私の好きな日本語の一つです。英語でPersonalization、カタカナではパーソナライゼーションと、とても長い単語であるにも関わらず、漢字で書くとシンプルに3文字。幅の狭いカラムにも一行ですっきり収まります。しかも、3文字の漢字それぞれが意味と役割を持ち、「個別化」が何であるかを全身で訴えているのです。なんて美しい単語だと思いませんか! 

 前振りはさておき、今回のテーマは「個別化」そして「超個別化」です。お客様は買物について、小売企業とCPGメーカーはロイヤリティを築く方法について無数の選択肢が存在するこの現実を、「個別化」と「超個別化」におけるAIといった観点から考えていきましょう。

個別化論がお客様の買い物体験を向上させる

 そもそもなぜ「個別化」が必要なのでしょうか?それは、企業にとって成長をもたらし、お客様の買物体験を向上させる最大要因のひとつだからです。dunnhumbyが行った小売企業の利益性に関する調査では、包括的かつ戦略的に「個別化」でお客様とロイヤリティを築いている小売企業は、そうではない小売企業と比較して利益が最大43%高いことがわかりました(図1)。

図1.小売企業における個別化の戦略的習熟度別利益差
図1.小売企業における個別化の戦略的習熟度別利益差

 また、買物体験が「個別化」され優れていればいるほど、お客様のウォレットシェアが高いことも示されました(図2)。「個別化」はもはや、取り組まない理由が見つからないと言っても過言ではないと感じさせる調査結果です。

図2.ロイヤリティ&個別化とウォレットシェアの関係
図2.ロイヤリティ&個別化とウォレットシェアの関係

個別化はお客様と1対1のエンゲージメントを築くカギ
AIはカギが使えるようにするためのエンジン

 小売企業における「個別化」=クーポンの公式が成立する時代がありました。しかし世の中に選択肢があふれる今、ロイヤリティプログラムを「個別化」する手法はクーポンに限ったことではありません。価格や販促、品揃え、ECサイトのレイアウト、おすすめ情報の発信頻度やチャネルなど、カスタマージャーニー上にある全てのチャネルとタッチポイントにおいて「個別化」を行うことを、私たちは「超個別化」(ハイパー・パーソナライゼーション)と呼んでいます。

 ロイヤリティプログラムは今までも長い間お客様との関係構築において大きな役割を担ってきましたが、データサイエンス、クラウドインフラやソフトウェアが進化した現代においては、もはや戦いのルールが書き換えられたと言ってもいいでしょう。今や、ロイヤリティプログラムそしてこの小売業界で勝ち抜くためには「個別化」が必須です。

 「個別化」がお客様と1対1のエンゲージメントを築き、企業に成長をもたらすカギだとします。ただ、カギを持っていてもそれを使って扉を開けないと意味がありません。カギが使えるようにするためのエンジンがAIなのです。

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