KDDIの行動ビッグデータと企業保有データを組み合わせ顧客特性・傾向を可視化

2025/02/03 07:00
Pocket

KDDIは2024年8月から、位置情報や興味関心データをはじめとするさまざまな行動ビッグデータを活用し、小売企業が保有する店舗売上・会員情報などのデータを組み合わせて売上予測や店舗開発業務を支援するサービス「KDDI Retail Data Consulting(以下、KRDC)」の提供を開始している。その特長は、データ収集と分析、そして活用という手間がかかり、効果的な結果が得にくいという課題を解決している点だ。データの統合から分析、そして可視化によって、小売業界の課題解決に向けた取り組みを強力にバックアップしている。

KDDI Retail Data Consulting

自社データでは把握できない多様化した価値観を可視化

 小売業界の課題として、データの収集とその統合、さらにデータ活用のための分析と可視化が挙げられる。小売業では、さまざまなデータを保有しているが、組織がサイロ化しているため、別々に管理されているデータの統合・分析がしにくいという実態がある。また、顧客ニーズが多様化し、コロナ禍による行動変容が加わったことで、顧客ロイヤルティ向上のための効果的な施策が打ちにくいという課題に直面している。

 さらに、同業他社との競合だけではなく、異業種からの参入というケースも増加している競争環境の中で、いままでにない施策やオリジナリティーを生かした差別化が重要なポイントとなってきた。

 そのため競争戦略においては、自社データを活用するプロセスを改善し、効果的なデータ分析を行うことが必須となっている。手間のかかるデータの収集や分析の効率化を図り、自社データだけでは対応できない部分を補うデータを取り込み、活用することが求められている。これらの課題を解決し、多様な消費行動のデジタル化や店舗業務のDX化を支援することで、データ分析・予測と業務効率化による小売業界の持続的な成長につなげるソリューションがKRDCだ。可視化された分析結果から、売上予測や店舗開発業務の支援を可能にしているのが特長である。

KDDIが保有するビッグデータで顧客特性と行動傾向を把握

 KRDCは、KDDIが展開する「au PAY」などの決済データやECおよびエンタメコンテンツなどのサービス利用状況データと小売企業が保有するデータを組み合わせることにより、顧客特性と行動傾向をより詳細に分析することができる。

 KDDIが保有する行動ビッグデータは、人流データ、興味関心データ、決済データなど多岐にわたる。経営戦略本部 データマネジメント部 データソリューションGの佐々木黄菜氏は「とくに、99項目のデータを整備し、潜在ニーズ分析が可能となった『興味関心データ』は、多くの企業から高い評価をいただいています」と話す。項目は、たとえば「食品」と「飲料」、「メイク、化粧品」「香水、香料」「ヘアケア商品」というように商品カテゴリーごとに詳細な項目が設定されている。さらに、小売企業の要望に応じてカスタマイズすることも可能だ。

 KRDCには、小売企業の課題に応えるため「マーケティング活用パック」「店舗開発支援パック」「売上予測支援パック」「在庫可視化・最適化パック」「品揃え最適化パック」の5つのパッケージがラインアップされている。

KDDI Retail Data Consulting ラインアップ
小売業の課題に対応するために5つのパッケージをラインアップしている

 その中でも、高い注目度で、採用率が高いのが「マーケティング活用パック」と「店舗開発支援パック」である。

 「マーケティング活用パック」は、施設来訪者の来訪パターンを推定し、効果的な広告の打ち手の検討支援を行う。「たとえばデータ分析の結果、近隣から来訪者が多く、電車よりもバス利用者が多いという結果であれば、駅よりもバス停やバス路線での販促施策の改善を支援することができます」(佐々木氏)。

佐々木 黄菜氏
KDDI株式会社
経営戦略本部
データマネジメント部
データソリューションG
佐々木 黄菜 氏

 「店舗開発支援パック」は、出店・退店・移転といった目的に応じて、エリア選定や物件選定の評価を支援。人流データ・興味関心データによって商圏内の特長を一目でわかるヒートマップで可視化し、さらに、候補地の商圏内の物件選定もわかりやすく比較検討できるため、スピーディな出店判断が可能になる。佐々木氏は「たとえば、出店候補地へ社員を派遣し周辺の通行人数や車両台数を手動でカウントしていたお客様からは、KRDCを活用したことで店舗や駐車場規模の検討スピードが大幅に向上したと喜んでいただきました」と話す。

「マーケティング活用パック」と「店舗開発支援パック」
小売業で採用率が高い「マーケティング活用パック」と「店舗開発支援パック」

KRDCを導入の「JR西日本SC開発株式会社」は「興味関心分析」を活用

 JR大阪駅に直結する国内最大級の駅型商業施設「ルクア大阪」等の運営を行うJR西日本SC開発株式会社は、大阪駅周辺開発のマーケット調査に際して、大阪駅利用者の人流分析および興味関心の分析・調査でKRDCを活用した。従来の独自のマーケット調査は、広域商圏を対象としていたため、小規模開発の調査には向いていないことやアンケート実施後のインタビューにも時間がかかっていたことが課題であった。

 KRDCを導入したことで、半年近くかかる調査期間が約2ヶ月に短縮することができた。さらに、大阪駅利用者の興味関心傾向をリアルに把握することも可能になった。ランキングの20位まで抽出できたことで、重要な上位ランキングの項目だけでなく、下位の興味関心事に参考材料となるものがあるのではないかという気づきが得られたことが大きいとのことだ。

 KDDIでは今後、KRDCでデータの統合、分析、可視化の機能充実を図り、小売業の支援パートナーとしてのコンサルティング力を高めることで、小売業界の幅広い領域の課題解決に向けた取り組みを強化していく方針だ。

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態