農心ジャパンのロングセラーブランド「辛ラーメン」は、ほかにはない旨辛なおいしさでコロナ禍が落ち着いた2023年以降も好調に推移。さらに辛味に苦手意識を持つユーザーに好評な「辛ラーメンキムチ」の拡販を通じ、「辛ラーメン」ブランド全体の活性化を図る。
代替のきかない唯一の味わい
農心ジャパンの「辛ラーメン」はもちもちとしたコシのある太麺と、厳選した唐辛子の「辛さ」、ブレンドしたオリジナルスパイスと素材の旨み成分がたっぷり溶け込んだ「旨味スープ」により、「旨さ」と「辛さ」がマッチした絶妙なおいしさがクセになるインスタントラーメンブランドだ。
1986年の発売以来、旨さと辛さが調和した独自の味わいで、世界中で愛される同ブランドは現在100カ国以上に輸出している。
農心は世界中に韓国と同じ味を届けることをコンセプトとしており、「辛ラーメン」についても各国の味覚に合わせたローカライズをせず、本場韓国の味を手軽に楽しめる点を打ち出している。
「辛ラーメン」は豊富なラインアップも魅力のひとつだ。
レギュラータイプのほか、濃厚でコクのある特製豚骨スープと厳選した唐辛子にオリジナルスパイスを加えたプレミアムタイプの「辛ラーメンブラック」、通常の「辛ラーメン」の2倍の辛さを持つ「辛ラーメン激辛」、辛ラーメンの旨味はそのままに、よりスパイシーな「辛ラーメン焼きそば」、チーズによりマイルドでコクがある「辛ラーメン焼きそばチーズ」を展開している。
即席めんカテゴリーのカップ麺と袋麺の割合は7対3と多くのブランドでカップ麺のシェアが高いが、「辛ラーメン」ブランドについては、3対7と袋麺タイプのシェアが高くなっている。
コロナ禍においては、外出制限による在宅時間の増加に伴い、即席めんの市場が一気に拡大したが、2023年に入り新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことでその動きも落ち着いた。
一方、「辛ラーメン」は23年に入っても前年比2ケタ増と好調に推移。好調の要因について農心ジャパンマーケティング部課長の三浦善隆氏は「『辛ラーメン』は指名買いが多く、辛いラーメン=『辛ラーメン』というイメージもしっかり根付いている。
とくに同ブランドはSNSでの情報発信やメニュー提案を強化し、離反していた消費者を含め多くのトライアルを獲ることができた。ほかにはないフレーバーだからこそ価格に左右されることなく、一度食べるとリピーターとなるユーザーが非常に多い」と分析している。
辛ラーメンのメーン購買層は40代の主婦層だが、他の即席めんと比較しZ世代のユーザーも多く、親子で楽しんでいる。また即席めんの主な喫食シーンは土日の昼食だが、「辛ラーメン」については平日や週末の夜の利用も多く、異なった楽しみ方をしている。
袋麺のニーズが高い「辛ラーメン」はアレンジレシピも豊富に開発しており、ブランドサイトや公式SNSを通じて紹介している。
辛味抑えた日本人好みの味「辛ラーメンキムチ」
幅広いラインアップを展開する「辛ラーメン」の中でも直近、とくに売上を伸ばしているのが「辛ラーメンキムチ」だ。
20年発売の同品は、農心ジャパンのスタッフも味の開発に係わっている。高級小麦にこだわったオリジナルと同じ麺、農心独自のフリーズドライ製法により、しゃきしゃきした食感が楽しめる白菜キムチが具材として入っており、辛味と酸味のバランスがよいスープによくマッチする。
23年、ある流通チェーンで行った試食販売では、「辛ラーメン」と「辛ラーメンキムチ」の食べ比べ企画を実施。すると「これなら辛くないので食べられる」と多くの来店客が「辛ラーメンキムチ」を購入。
辛さゆえにこれまで「辛ラーメン」を敬遠していたユーザーを取り込むことに成功した。
この結果を受け、24年2月に開催されたスーパーマーケットトレードショー(SMTS)の「辛ラーメン」ブースでも「辛ラーメンキムチ」の試食を展開。約8割が「辛くないので食べやすい」と回答した。
来場したバイヤーからは「『辛ラーメン』は以前からよく知っているが、『辛ラーメンキムチ』は初めて食べた」「これなら辛いものが苦手な消費者も手に取りやすい」と好評で、導入企業も飛躍的に増加。これらの施策が奏功し前期比135%と好調に推移している。
農心ジャパンでは、今期も「辛ラーメンキムチ」の店頭試食を積極的に展開。辛さに苦手意識を持つ消費者にアプローチし、ユーザーの拡大をねらう。
選べる楽しみを提供する本棚風のディスプレイ
再来年誕生40周年を迎える「辛ラーメン」ブランド。23年12月には国連WFPが展開する、世界の子供たちの飢餓をなくすための取り組み「レッドカップキャンペーン」にも参画し、事業を通じて「子どもたちの栄養状態の改善」をはじめとしたSDGsへの貢献を果たしている。
24年下期も「辛ラーメン」のトライアルを促進するため、さまざまなプロモーションを企画。昨年好評だった海の家でのメニュー提供をはじめ、秋には東京・原宿でのポップアップイベントや一般流通向けのマストバイキャンペーンも実施する予定だ。
店頭向けの施策として、注目されるのが「韓国式ラーメン本棚」陳列による売場展開だ。これは日本のレトルトカレー売場で見かける本棚陳列に似たディスプレイ方法で、韓国の販売店ではすでに展開されている。
「辛ラーメン」をはじめとした農心ブランドの商品はパッケージの側面にもデザインが施されており、縦向きに陳列しても見栄えがよいことから店頭での訴求力も高い。
22年末、福岡県のドン・キホーテ中洲店で行ったポップアップ企画で、「韓国式ラーメン本棚」陳列を導入したところ「選ぶ楽しみがある」と非常に好評で、24年のSMTSブースでもモデル棚を設置。今期は流通各社への提案も検討している。
農心ジャパンでは「辛いって、たのしい!」をブランドメッセージに、さまざまな施策を通じて日本国内での「辛ラーメン」のブランドシェアをさらに高めていきたいと話している。