家電量販店のエディオンでは、2020年4月からLINE チラシを導入し、着実に閲覧(PV)数を伸ばしている。同社のマーケティング統括部でデジタル販促を担当する神田氏に、LINE チラシ導入の背景と、今後の展望について話を聞いた。
デジタル販促で実店舗とEC双方に送客
──はじめに神田様のプロフィールと担当領域についてお聞かせください。
神田 1995年4月にエディオンに入社しました。当時はパソコンブームだったこともあってPC 機器を専門に取り扱う店舗に配属され、ブームが落ち着いてからは家電専門店舗に移り約15年間、現場を経験しました。その後、本部に異動して経営企画部で5年間勤め、現在のマーケティング統括部は4年目となります。現在は自社アプリの運用やデジタルのプロモーションを担当しています。
──御社の販促施策に関する戦略と、活用されているツールについてお聞かせください。
神田 デジタル販促はお客さまとの接点を増やし、リアル店舗の来店客数、もしくはネットショップの訪問数を増やすことがゴールだと考えています。現在、デジタル販促で活用しているツールは、デジタルチラシ、ダイレクトメール、自社アプリ、LINE 公式アカウント、その他メール配信ツールやWEB 接客ツールなどです。また、キャッシュレス決済などの導入も推進しています。
──ツールをどのように使い分けていますか?
神田 デジタルチラシはマス向け、ダイレクトメールはクローズドの顧客向けで、アプリもダイレクトメールに近い立ち位置です。LINE 公式アカウントはアプリよりももう少し手軽なコミュニケーション手段ですね。マス向けのデジタルチラシとクローズドのアプリの間を埋めるのが、LINE 公式アカウントの役割だと考えています。
他媒体と比較しチラシのPV数が約4倍に
──エディオンでは20年4月にLINEチラシを導入していますが、取り組みの背景についてお聞かせください。
神田 多くの家電量販店は毎週末、チラシを配布することが常態化しています。そんななか、新聞の購読率は低下し、インターネットでの情報収集が当たり前になってきた10年ほど前から、当社では電子チラシの取り組みを開始しました。しかし、ここ数年、出稿していたデジタルチラシメディアでのPV 数が伸びないことに課題を感じていました。
顧客との接点を増やすための新たな手段を模索しているなか、大日本印刷様からLINEチラシのご紹介があり、ユーザー数や1日あたりのアクティブユーザー数(DAU)の数値に大きな可能性を感じて導入を決めました。
──LINEチラシの成果についてはいかがですか?
神田 リリース当時はフォーマットも定まっておらず不安要素もありましたが、現在は導入前に出稿していた既存デジタルチラシと比較して約4倍のPV 数まで伸長し、週単位での計画は達成している状況です。
欲をいえばもう少し伸びてほしいところですが、LINE 社も試行錯誤しながらさまざまなプロモーションに取り組んでいるため、効果的な方法が見つかればさらに数字は伸びていくと考えています。
──エディオンではLINEチラシのほか、LINE 公式アカウントも活用されていますが、それぞれの使い分けや目的について教えてください。
神田 LINE 公式アカウントは数年前から導入しており、既存のデジタルチラシをいかに多くのユーザーに届けるかといった観点から運用を始めました。LINEの利点は手軽さと月間利用者数8600万人(2020年9月末時点)という膨大なユーザー数にあります。先ほども申し上げましたが、LINEチラシはマス向け、アプリはクローズドな顧客を対象としており、その間を埋める存在がLINE公式アカウントだと考えています。
LINE チラシはあくまでもチラシの情報を届ける役割ですが、LINE 公式アカウントについては、チラシのようなセールの案内だけでなく、家電製品のお役立ち情報なども含めた幅広い情報を配信し、ほどよい距離感を保ったコミュニケーションを心がけています。LINEチラシをスタートしたことで、LINE 公式アカウントの友だち数も伸びており、今後もLINE チラシとの連携を深めながら、より多くのお客さまに接点を持つことができればと思っています。
誰の目にも留まるデジタルチラシをめざす
──LINEチラシの活用で成果を得るために必要なことは何でしょうか?
神田 チラシの見せ方でしょうか。現状はLINEチラシのプロモーションによって閲覧数が大きく伸長する週もあれば、そうでない週もあり、結果に差が出ています。安定的にLINE チラシのPV数を得るため、現在、大日本印刷様にご協力いただき、チラシのタイトルや旬の商品などを意識しながら、ファーストアクションでユーザーの目に留まるデザインを検討しているところです。
また、デジタルチラシは紙のチラシと比較し、施策の効果検証がしやすいというメリットがあります。LINE チラシでもLINE Beaconを活用し、チラシの閲覧が来店につながった数値を計測する実証実験を一部店舗で行っています。今後はデジタルチラシの閲覧が、どれだけ来店や購入につながったのかを可視化できるようになればと考えています。
──今後、LINEチラシに期待することについてお聞かせください。
神田 現状、LINE 社のプロモーションにより週間のPV 数が大きく変わるため、これをある程度、当社側でコントロールし、チラシの企画に応じた客層に届くような仕組みがあればと思います。
また、紙のチラシでは企画や特集に沿ってそれぞれの商品を掲載していますが、デジタルチラシを全面で閲覧した際、それらが視覚的に伝わりづらいといった課題を感じています。
たとえば家電の場合、商品の機能やスペック等も一緒に紹介したいのですが、LINE チラシはすべての商品・詳細を掲載できるわけではないので、今後は企画や特典などをお客さまに伝わりやすいかたちで掲載できるような改善に期待しています。
家電はその商品特性上、壊れた時、調子が悪くなった時に買い替えるものですから、お客さまが欲しいと思った時、すぐそばにエディオンのチラシがあるという状態をつくっておきたいですね。LINE チラシでPV 数は大幅に伸びましたが、LINE のユーザー数を考えるとまだまだ伸びしろがあると思っています。LINE チラシおよびLINE 公式アカウントの友だち数を増加させるとともに、家電のデジタルチラシを閲覧しているユーザーの特性を検証していただき、必要としている人に向けたメッセージ配信を強化することで、安定的なPV 数の確保とさらなる伸長を期待しています。