リテールメディアは企業戦略である
急成長を続けるリテールメディア
2月の第1回目の記事では、自らdunnhumbyを「知る人ぞ知る、知らない人は知らない」会社であると表現しました。さて、第3回目となる本稿は、「誰もがその名を知っているが、実態を詳細に知る人は意外と少ない」リテールメディアの話です。
リテールメディアといえばアメリカと思う方は多いと思います。まずはそのアメリカにおいての成長推移を見てみましょう。EMARKETER社のアンドリュー・リップスマン氏はリテールメディアを「デジタル広告の第3波」と呼び、広告売上が10憶US ドルから300億USドルまでに達した年数を1波(検索)、2波(SNS)と比較したグラフを公表しました。検索が14年を要した売上30倍を、リテールメディアはたった5年で達成し、未だに破竹の勢いで伸びています。今と20年前ではデジタル広告のインベントリ母数が違うとはいえ、リテールメディアへの出稿需要の高さを実感します。

日本ではと言いますと導入事例は増えているものの、リテールメディアの真価を引き出すために各社が試行錯誤の最中にあると言えるでしょう。
購入に最も近い場所でお客様と接点を持てる広告
実際の取り組みに関わっている方は、日本におけるリテールメディアの立ち上げと成功がどれだけ複雑であるか痛感していらっしゃると思います。その「成功」の姿が欧米のリテールメディアと同じではないと知っていても、様々な困難を伴ういばらの道であるのは間違いありません。
ここで今一度、小売企業はなぜリテールメディアを導入するのか、広告主はなぜリテールメディアに出稿するのか考えてみましょう。決して流行っているから、欧米でやっているからではありません。リテールメディアはマーケティングのファネル上、他のどんな広告より購入に近い場所でお客様と直接的な接点を持つことが出来るメディアだからです。
リテールメディアを展開するの理由は小売企業にとっては利益率の高さや買物体験の向上、広告主となるCPGメーカーにとっては優れたROIやブランド体験の向上などの効果が期待できることです。それをどこでやるのがベストなのかとなると、やはり購入に最も近いリテールメディアになるわけです。
リテールエコシステムの不可欠な要素
世界のベストプラクティスをみていると、リテールメディアを成功させた小売企業はリテールメディアを企業戦略の重要な一部として位置付けているということに気づきます。下流のプロジェクトとして機能しているのではなく、経営陣が描く、現在そして将来の姿と目線をあわせ、企業の戦略と未来の成長を定義する大きな柱として取り組みが行われているのです。
あらためてdunnhumbyのパーパスであり、戦略である“トライアングル”を語らせてください(図2)。小売企業はロイヤリティプログラムを通じてお客様に関するデータを収集し、そのデータを使って個別化を提供し、カテゴリーマネジメントの施策(品揃え、価格、販促など)では小売企業とCPGが協働することにより、メリットをお客様に提供し体験を向上させる。ただ、施策を行うには資金が必要となるため、メディアを通じて収益性をあげ、お客様とCPGは高いエンゲージメントを築くことができる。その中心にあり全てをつなぐのがデータであり、プラットフォームであり、サイエンスであり、テクノロジーです。
これらすべての要素が現代の小売業界におけるリテールエコシステムの欠けてはいけない要素なのです。ここで重要なのは、リテールメディア内だけで完結するエコシステムではなく、企業全体のエコシステムの一部としてリテールメディアが不可欠であるということです。

今、選択肢の時代だからこそロイヤリティ の新着記事
-
2025/06/18
リテールメディアは企業戦略である -
2025/04/14
小売企業の収益性を高めるAIを活用したパーソナライゼーション5つの手法とは -
2025/02/18
店舗の最適な棚割りを実現してお客様ロイヤリティを創造する5つのポイント
この連載の一覧はこちら [3記事]
