小売業の顧客との接点がリアル店舗からECサイト、アプリなどデジタルタッチポイントに拡大する中、顧客に店舗情報を正確に素早く発信する重要性が高まっている。多店舗展開する企業では、店舗情報の更新や変更作業に多くの時間がかかり、作業負荷が課題になっている。その課題を解決するのが、ナビタイムジャパンの「NAVITIME Location Cloud」だ。店舗情報の一元管理によって効率化が図れるとともに、外部メディアと連携し、インバウンドにも対応。店舗の来店促進につながるマーケティング施策にも活用でき、顧客の購買体験向上につながる効果もあることから多くの企業で採用されている。
店舗データの一元管理・発信の効率化
行きたい店舗を事前に把握する際に、「地域名+スーパー」などエリアを指定し近隣地域の店舗を検索し、店舗の営業時間など店舗情報を事前に調べるローカル検索は、コロナ禍で拡大したが、今や顧客の購買行動のプロセスの中ですっかり定着し、来店前の事前検索は当たり前になっている。Google(ブラウザ)検索だけでなく、Googleマップなどの地図アプリでの検索、そのほかSNS、特化メディアなど、さまざまなメディアの利用が増加している。
小売業もそうした顧客の購買行動の変化に対応して、顧客が店舗検索で利用する地図や検索メディアへの対策としてMEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)を強化しているが、アプリやECサイト、モバイルオーダー、テイクアウト、店舗受け取り、店内のデジタルサイネージなど、顧客に店舗情報を伝えるタッチポイントが増加し続けている。店舗情報を管理・更新する作業負荷が課題となっており、MEO対策だけでなく、多くのタッチポイントを一元管理する必要性が高まっている。
そうした課題を解決するために開発されたのが、ナビタイムジャパンの「NAVITIME Location Cloud」だ。「NAVITIME Location Cloud」は、多店舗展開企業向けの店舗データ管理・店舗マーケティングのクラウドサービス。同社が個人向け経路検索サービスの『NAVITIME』で培った技術を生かして店舗データを一元管理し、そのデータを元にSEOに最適化された店舗サイトを構築。Googleビジネスプロフィールや、外部のさまざまなメディアとのデータ連携が可能で、店舗データの管理コストを削減するとともに、顧客の検索・移動・来店・購買体験の向上が図れ、来店促進に役立つサービスとして、導入する企業が増えている。
現在、「NAVITIME Location Cloud」は、ニトリ、エディオン、ウエルシア薬局、New Days、外食の吉野家、サイゼリヤ、サーティワンアイスクリーム、かつや、ドトールコーヒーのほか、セブン銀行など、多店舗展開企業で採用されている。
「私たちは元々、店舗の案内サイトの構築やサイト内の店舗検索ペーシの作成を手掛けていました。そこで小売業から、GoogleマップやYahoo!マップ上の店舗情報が更新されていないことによる顧客からの質問、店舗の開店・閉店、営業時間の変更等、店舗データの整備や更新に大きな負担がかかっている課題をお聞きし、これまで培ってきたナビゲーションの技術や大量の店舗情報を管理するノウハウを生かしたサービスを提供し、小売業の店舗情報の管理・発信作業の効率化を図ることをめざしました」と、ロケーションマーケティング事業 事業責任者 内門 智弥氏は、開発の背景について語る。
外部メディアと連携、インバウンドにも対応
「NAVITIME Location Cloud」の特長としてまず挙げられるのは、多店舗のデータをクラウドで一元管理できることだ。店舗の住所や営業時間、定休日などの基本情報に加え、取扱商品やサービス、実施中のキャンペーン情報も合わせて管理することができる。そのため、店舗情報の変更や更新が必要な際には、外部の業者に依頼していた場合に比べて、自社内でリアルタイムに変更や更新作業を行えるため、正しい店舗情報が即時反映でき、店舗情報の不一致や不足による顧客からの問い合わせを減らすことができる。
顧客の店舗情報の検索や購買行動の多様化によって、利用するメディアも多様化している。多店舗展開している小売業では、そうした顧客の利用メディアの多様化に対応するために、自社メディアに加えて複数のメディアに最新の正確な店舗情報を掲載する必要がある。誤った情報の掲載によって、来店機会が失われ、店舗ブランドの信頼を損ねてしまうリスクが発生する。「NAVITIME Location Cloud」では、自社メディアだけでなく、Googleビジネスプロフィール、Appleマップ、Yahoo!マップ、Facebook などのSNS、カーナビなど外部メディアへの店舗情報の連携・掲載も行える。
各メディアに配信する店舗データは、店舗データ一元管理機能で運用。ナビタイムジャパンの日本全国の住所や駅のマスタと900万件以上の施設のデータベースを活かして、住所文字列から正しい緯度経度や最寄駅などの周辺情報を自動補完したり、営業時間の文字列情報から構造化したデータに変換したりすることが可能で、メディアごとに異なるデータフォーマットを作成・変換する手間なく配信できるのが特徴だ。
「NAVITIME Location Cloud」では、店舗の多言語データを自動生成できる機能も備えている。この機能は日本語で登録した店舗データを、自動で多言語に翻訳。翻訳されたデータから店舗の多言語ページを生成できる。インバウンド(訪日外国人観光客)の利用の多いインバウンドメディア「Tripadvisor」やナビタイムジャパンが提供する「Japan Travel by NAVITIME」のような特化メディアへの店舗情報の連携・掲載も容易に行える。
独自の行動ビッグデータの分析でMEO対策をサポート
店舗の来店促進策として、ローカルSEO対策に加えて、MEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)の重要性が高まっている。「NAVITIME Location Cloud」では5100万MAUのナビタイムジャパンが提供する全サービスから得られた利用者の検索・移動行動ビッグデータを分析することで検索需要・動向を把握でき、日本全国の駅や施設のデータベースを活かしたローカル検索対策で、効率的なMEO施策の実施をサポートできるのも特徴だ。
「私たちが提供している『NAVITIME』から利用者の検索ログを活用することで、どういうカテゴリの施設が、どこでよく調べられているのか、を抽出・分析することができます。例えばコンビニであれば駅周辺はもちろん、スタジアムなどの大型施設やホテルの近くで検索が多いということが、検索ログと地点データを組み合わせることでわかりますので、MEO対策のコンサルティングに生かせます。弊社ならではの強みになっています」(内門氏)。MEO施策の効果測定や自店舗の掲載順位の分析によって、マーケティング施策の効果測定が可能になるため、効果的な来店促進策を実施することができる。
【導入事例 エディオン】デジタルチラシへの流入が20倍に増加、来店促進に効果
エディオンでは、以前は、店舗データの変更・更新に加えて、Googleビジネスプロフィールの変更、Yahoo!プレイスの変更など、4~5の外部メディアの店舗データの変更・更新作業に多くの時間を要していた。そのため、タイムリーな店舗データの変更・更新作業が
できない課題を抱えていた。「NAVITIME Location Cloud」を採用・運用することで、店舗データ管理の効率化を実現している。
顧客の来店促進のきっかけになるチラシや店舗情報の発信、認知度を高めるために、自社の店舗検索サイトとGoogleビジネスプロフィールを連携することで、最新情報の投稿のリアルタイム性を向上させた。MEO対策も強化し、顧客の検索導線に合わせてチラシ情報が閲覧される仕組みを構築した。その結果、デジタルチラシの閲覧数が20倍に増加し、エディオンの認知度向上と来店促進に効果を上げている。
「NAVITIME Location Cloud」は、2020年10月にローンチして以降、順次、機能進化・拡張を継続的に行っている。今後は、「小売業ではオンラインとオフラインを融合させたOMOで顧客がネットでもリアル店舗でもシームレスに購買できるようにする戦略を推進しています。顧客の、『今、欲しい商品がどこで買えるのか』というニーズはますます高まっていきますので、ネットやリアル店舗の在庫の有無を踏まえた商品検索もリアルタイムにできる店舗検索機能の拡張を計画しています」(内門氏)と、小売業がめざす顧客体験向上にむけたアプローチを強力に支援していく方針だ。