「まさに3重苦」──。欧州の小売業界では、そんな発言も飛び出すようになった。
2022年、それに続く23年のインフレは欧州の小売企業にも多大な影響を及ぼしている。原材料やエネルギーの高騰によって商品の仕入れ価格が急騰するうえに、光熱費などオペレーションコストが上昇するが、購買余力のない生活者に値上がり分をこれ以上転嫁することはできない。その“3重苦”によって小売業の利益は減少。とくに、もともと薄利な食品小売業では売上高純利益率が1%を切る企業も出始めた。
そんななか、注目を集めているのが、共同購買機構である。22年7月、国際的ビジネススクールの欧州経営大学院(INSEAD)が共同購買機構に関する論文を発表した。食品を中心とする20カテゴリーの計13万8000品目の過去6年間の小売価格を、共同購買機構の1 つであるエイジコア(AgeCore)を介して購入するドイツのエデカ(Edeka)と、共同購買機構に未加盟の複数企業とで比較した。その結果、エデカの売価のほうが12%低かった。値ごろな価格で商品を調達することが困難になる中、食品小売企業が共同購買機構に着目するのもうなずける。
欧州の代表的な共同購買機構の1つが、1989年に誕生したEMD(European MarketingDistribution)である。中小小売企業が加盟し、その総売上高は1400億ユーロ(約19兆6000億円)と欧州屈指の規模の共同購買機構である。中小小売企業がナショナルブランド商品の価格で大手小売チェーンに太刀打ちし、競争力のあるプライベートブランド商品を開発するのに、共同購買機構はいっそう重要になっている。
一方、2015年に設立されたエイジコアは大手小売りチェーンで構成される。主要メンバーのエデカとフランスのアンテルマルシェ(Intermarché)が相次いで脱退したが、スペインのエロスキ(Eroski)、ベルギーのコルライト(Colruyt)など、各国のナンバーワン企業が引き続き加盟している。
なお、エデカは21年3月、スウェーデンのICA、スイスのミグロス(Migros)などとともに共同購入機構の
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