EC特有の不良在庫リスクを削減! 中国EC大手・京東が描く「再商品化」の新スキームとは?

文:牧野 武文(ライター)
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 中国のEC市場では、返品率の高止まりが深刻な課題になっている。とくに女性向けアパレルは返品率が非常に高く、一部のライブコマースでは80%に達するケースもある。販売業者によれば、衝動的に購入し、商品到着後に冷静になって返品する消費者が多いという。

 さらに、サイズの不一致というアパレル特有の問題も返品の一因となっている。販売側が「複数サイズを注文して試着し、不要な商品を返品する」という買物スタイルを提案したことで、“返品前提”の購買行動が定着しているのが現状だ。

 ECでは商品の実物を確認できないため、「素材の質感がイメージと違った」「着用したら想定したようなボディラインが出なかった」といった理由でも返品が発生している。こうした返品は、販売業者にとって想定内のコストであり、返品後は検品、補修、アイロンがけ、再包装を経て再商品化される。

 ただ、アパレル商品は販売期間が非常に短いという特徴がある。一般的に、販売シーズンは3カ月、商品によっては1カ月で終了してしまう。返品された商品を再び販売可能な状態に戻すには約2週間を要するため、シーズン後半の返品は再販に間に合わず、不良在庫となるリスクが高い。

 こうした課題への対応として、多くの販売業者が大型セールの1カ月ほど前から先行セールを開始し、返品商品の再商品化と再販を早める工夫を行っている。ただし、セールのタイミングが早まることで「鮮度」が落ち、目玉商品の訴求力が弱まり、販売数が伸び悩むというジレンマもある。

配送センター内で返品商品を再商品化へ

 この問題に対し、中国のEC大手・京東(JD.com)傘下の物流会社である京東物流(JD Logistics)が新たな解決策を打ち出した。同社は、自社の配送センター内に検品・補修・再包装などを行う「リワーク施設」を設け、返品された商品の再商品化を1カ所で完結させる仕組みを整備。従来は、消費者から返品された商品を販売業者の倉庫に戻して再商品化していたが、それにかかる物流時間とコストを大幅に削減できる。

京東物流のリワーク施設をすぐに設置できる体制
京東物流は、自社倉庫をメーカーに貸し出すことでリワーク施設をすぐに設置できる体制を整えている(写真は京東物流ウェブサイトより引用)

 実際、リワーク施設を介することで

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