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人気絶大も業績は低迷  中国で「無印良品」が苦戦する理由

無印良品 上海旗艦店
良品計画が展開する「無印良品」は、中国の20~30代の男女から根強い人気を集めているが、業績は低迷している。(i-stock/Robert Way)

 良品計画が展開する「無印良品」は、中国の20~30代の男女から根強い人気を集めている。無印良品の「簡素」「自由」「快適」といったブランドコンセプトが、若い世代から共感を得ているのだ。ちなみに中国の不用品売買サービスでは、しばしば無印良品の紙製ショッピングバッグが取引されている。知人にちょっとしたプレゼントをするときに高級感を出せるからだ。このように無印良品は中国において「上質な日用雑貨小売」として認識され、今や全土に300店舗超を展開している。

 ところが、業績は低迷している。コロナ禍での大きな痛手は避けられなかったとしても、既存店売上高を見ると、すでに2018年にはマイナス成長に入り、19年秋にようやくプラス成長に戻ったところにコロナの感染拡大が始まってしまった。22年8月期の中国事業の既存店売上高は、好調のEC売上高を含めても対前期比88.4%と厳しい状況である。

無印良品の中国での既存店+EC売上の前年同期比の変化。色付きの部分はコロナ禍の時期。その前から無印良品の苦境は始まっていた(良品計画DATABOOKより筆者作成)

日本との価格差に不満
「無印はセールで買うもの」

 なぜ人気はあるのに売れないのか。いちばん大きな理由は、価格設定が高すぎるからだ。良品計画の21年の年報にも「近年は業績拡大のペースが鈍化していると認識しています。これは、日常的に商品を購入するには価格がやや高いとの認知や……」という記述がある。しかし、中国で問題になっているのは価格そのものだけではなく、日本国内の価格との“格差”だ。両国で共通して販売されている商品は多いが、ほとんどが中国のほうが高い。ここに中国の消費者たちは不満を抱えているのだ。

 たとえば、日本で5990円(税込)で販売されている「超音波うるおいアロマディフューザー」は、中国では398元(約7600円:1元=19円換算)。今年11月11日の「独身の日」セールでは310元(約5900円)と大幅割引となり、日中の価格がほぼ同じになった。そのため、中国のSNSには「MUJI割引攻略」という記事があふれ、「無印良品の商品はセールのときに買うもの」という見方が広まってしまった。

 良品計画もこの問題を認識していて、日中の価格差解消を進めているようだが、まだまだ多くの商品が日本価格よりも割高で販売されている。そのため人気は高いのに、思うような売上につながらないという状況を引き起こしているのだ。

無視できない模倣ブランドの進撃

 良品計画はこの問題を急いで解決しないと、中国での居場所を失うことにもなりかねない。なぜなら、名創優品(メイソウ)というライバルが急速に力をつけているからだ。メイソウは以前から、「無印良品とユニクロとダイソーを足して3で割った“パクリ企業”」などと揶揄されてきたが、今では中国で約3300店舗、東南アジアと中東などに約2000店舗を展開し、店舗規模では良品計画の10倍近い規模を誇る。中国事業の営業収入も、良品計画の866億円(22年8月期)に対し、メイソウは546億円(22年度)まで迫る強力なライバルになっている。

 もっともメイソウの商品の質は、無印良品と比較するのも憚られるほど低い。だが、“無印良品風”のデザインはしっかり学んでいて、中国の消費者には「5分の1の価格で無印風の商品が手に入るブランド」と認識されている。品質は“中の下”であることは理解したうえで、「まずはメイソウで買ってみて、使い勝手がよければ同様の商品を無印良品で買う」という流れが出来上がっているのである。さらにメイソウは、以前に比べれば、“それなりに満足できる程度の品質”は担保するようになっている。

 一方、良品計画は現在、年間30店舗規模の新規出店により、営業収益は増収基調にある。しかし新規出店には相応のコストがかかり、収益性を改善しなければいずれは息切れすることになる。また、出店を拡大するなかでは中国の地方都市への進出も避けられないが、そこでは地方をホームグラウンドにするメイソウとの直接対決が待ち受ける。

ライター 牧野武文

 良品計画にとっては閉塞感が漂う状況ではあるが、まずは日中の価格差を解消しないことには、中国の消費者の見方が変わることはない。ブランド自体は高く支持されているのに業績につながらないという現状からの脱却を期待したい。