売上高“ウォルマート超え”に現実味 BtoB事業中心に増大するアマゾン経済圏

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アマゾン(Amazon.com)のビジネスモデルが変化している。2024年度はAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を筆頭に、広告、3Pセラーを軸としたBtoB事業が売上高の半分を占めるほどに拡大。成長率はBtoC事業以上で、すでに主力事業となっている。同年度、売上高伸長率でウォルマート(Walmart)を上回ったアマゾン。25年度は「世界一」が現実味を帯び始めている。

成長支える広告サービス、24年度は564億ドルに

 アマゾンの24年度の連結売上高は6379億5900万ドル(対前年度比11.0%増)、連結最終利益高は592億4800万ドル(同94.7%増)だった。売上高の伸び率は、20年度までおおむね20~30%だったのだが、21年度から落ち始めて、22年度から10%前後で推移している。今後はよくてたぶんこのまま横ばいか、または少しずつ下がっていくのだろうと思っている。

 もし横ばいで10%前後をキープすると、25年度の連結売上高は7000億ドル程度となる。一方、もしウォルマートが5%程度の増収だと7150億ドルとなる。アマゾンは「グローバル企業売上高ナンバーワン」という称号獲得にリーチをかけている。おそらく25年度中に少なくとも四半期ベースでウォルマートを抜くときが来るだろう。

 連結最終利益高は90%以上の高い増益率となっている。長年にわたって利益よりも市場拡大への投資を優先してきたが、そろそろ利益を優先し始めたのだろうと考えている。ちなみに24年度の営業利益率は10.8%ときわめて高い数値を残している。金額ベースでは685億ドル、1ドル145円換算で約10兆円だ。これは東京都の25年度予算に匹敵する。これが売上高ではなく利益なのだから、庶民の理解の枠を超えてしまっていると言ってよい。

 事業分野別の売上高比率は、北米60%、海外22.4%、AWS16.9%だった。為替の影響を除いた成長率は順番に10%増、10%増、19%増となっている。AWSは10年にわたって40%近い成長を続けていたのだが、23年に13%増へと急減、これを24年度は19%増へと回復させた。生成AIや大規模言語モデル(LLM)などAI関連サービス需要が急増したことが背景にある。

 また、営業利益の比率は36%、6%、58%で、AWSが半分以上を占めている。もはや業界の常識だが、理解の枠を超えた利益はAWSが生み出しているのである。この傾向はこれからも続き、AWSがリテーラーとしてのアマゾンを下支えする存在であることにしばらく変化はないだろう。日本にはAWSを利用している小売企業が少なくないが、競合企業の利益に貢献しているという視点は忘れてほしくない。

 事業7分類では、成長率はオンラインストア同6.5%増、AWS同18.5%増、3Pセラーサービス同11.5%増、広告サービス同19.8%増、サブスクライブサービス同10.4%増、フィジカルストア同5.9%増、その他同9.4%増だった。最も伸びている広告サービスの売上高は562億ドルで、8兆円を超える。ウェブ集客力でデジタル広告という新たな収益源をつくり出せることを証明したのはアマゾンである。

 また、AWS、3Pセラーサービス、広告サービスを合わせたBtoB事業は、総売上高のちょうど50%となった。成長率はBtoCよりもBtoBのほうが高いので、25年からBtoBが半分を超えることだろう。アマゾンは法人ビジネス主体へと変貌しているのである。

EC物流ハブとしてセンターの役割見直しへ

 23年に一時凍結した「フレッシュストア」の新規出店はその後に再開、スクラップ&ビルドを繰り返して24年後半に50店舗を突破、これを執筆している5月の時点で63店舗となっている。この凍結後の店舗は修正フォーマットで、凍結以前の店舗もこの修正フォーマットへの改装を進めている。

アマゾンフレッシュの最新店舗
アマゾンフレッシュの最新店舗。サラダバーなど作業負荷の高い売場を増やした

 改装のポイントを一言で言うと、「無機質だった店舗環境を手がかかる陳列や対面販売を強化してパッションが感じられるような売場に変えようとした」である。しかしながら私が実見する限り、

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記事執筆者

在米40年、現在はロサンゼルス在住。小売業界ジャーナリスト。年間訪問店数はのべ600店舗超、現場検証に基づいた分析をモットーとする。

著書

『ソリューションを売れ!』(ニューフォーマット研究所)
『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』(商業界)
『アマゾンVSウォルマート ネットの巨人とリアルの王者が描く小売の未来』(ダイヤモンド社)

 

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