[グラスゴー 14日 ロイター] – 13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が目指していたところは明白だった。つまり世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑え、気候変動がもたらす最悪の事態を回避するということだ。
採択された成果文書はこの条件を満たす内容になった。ただしあくまでぎりぎりの線であり、最終的にうまくいくかどうかは各国の今後の行動にかかっている。議長国を務めた英国の当局者やCOP26の参加者、専門家からはこうした厳しい見方が聞かれる。
シャルマCOP26議長は文書採択後、「それなりの信頼性がある形で1.5度以内の目標を維持したと言えるのではないか。しかし(今回の)上積み部分を巡る意気込みは低調であり、われわれは自らの約束を守ることでようやく生き残っていける」とくぎを刺した。
成果文書は200カ国近くが支持した。採択文書が地球温暖化の「主犯」とされる化石燃料を取り組みのターゲットとして明示したのは初めて。各国に温室効果ガス排出量削減の加速を求め、途上国の気候変動対策向け資金拠出を拡大すると表明した。また温室効果ガスの1つであるメタンの排出抑制や森林保護、環境関連金融の推進といった面で国家間、企業間、投資家間の自主的な約束と取り決めも積極的に促している。
とはいえ合意内容は妥協の産物になった。このため、よりスピード感のある対策を求めていた一部先進国から、資源が豊富にある発展途上国、海面上昇に脅かされる島しょ国まで、あらゆる関係者に不満が残ってしまった。国連のグテレス事務総長は成果文書について「現在の世界におけるさまざまな利害、条件、矛盾、国家の政治的意思が凝縮している。われわれは気候上の破局のドアを依然としてノックし続けている。緊急モードに移行する時期だ」と訴えた。
目標との大きなギャップ
COP26は、気温上昇を1.5度以内に抑える明確な道筋を定めるという意味では、各国から十分な排出量削減に関する約束を引き出せなかった。代わりに合意されたのは、来年の削減規模を拡大し、目標達成までの不足分を穴埋めしていくという姿勢だ。
だがそのギャップは非常に大きい。各国が現在、向こう10年で表明している排出量削減のままだと世界の気温は2.4度上がる。これを1.5度に抑えるには、世界全体で2030年までに排出量を10年の水準から45%減らさなければならない。
環境団体からは「COP26における妥協によって1.5度の目標が保たれたとはいえ、それは紙一重の状態だ」と懸念する声が出ている。
二酸化炭素排出量が世界最大の中国は先週の米国との共同宣言で、石炭使用やメタン排出の抑制、森林保護などを通じて排出量削減努力を強化する方針を打ち出したものの、いずれも具体策は明らかにしていない。
中国はCOP26の舞台では資源豊富な途上国の一角として、化石燃料削減を巡る成果文書の表現を弱める役回りも演じている。例えば文書の素案では、各国が石炭使用と化石燃料向け補助金を段階的に「廃止」すると記されていたが、石炭については「排出削減対策が取られていない石炭」に修正され、二酸化炭素貯留・回収技術を利用すれば石炭を使える余地が残された。補助金も「非効率な補助金」に改められ、同時に何が非効率か定義されなかったため、各国が石油やガス、石炭向け補助金で裁量を働かせることが可能になっている。
成果文書を巡る協議では中国とインドによる土壇場の介入で、石炭火力の「段階的廃止」が「段階的削減」に変更された。
途上国の期待と不安
先進国が行う途上国の気候変動対策への資金支援の面でも進展があった一方、幾つかの課題が残された。
この問題は結局、公平性に関する話になっている。先進国が過去に排出した温室効果ガスが今の気候変動の大きな原因となっている中で、途上国に要求している対策の費用を先進国が負担する気があるかどうかが問われているからだ。
その点で今回、先進国に合計支援規模を19年の水準から25年までに「少なくとも2倍」にするよう促したのは一定の前進だった。さらに小さな島しょ国や途上国が補償を求めている気候変動絡みの災害のコストについて「被害と損失」として初めて言及した。もっとも米国、欧州連合(EU)などの抵抗で、そうした補償金を確保する段階には至っていない。
気候変動対策支援では、先進国は年間1000億ドルを20年までに拠出するとした09年の約束を守っておらず、途上国側は23年までの支払いを期待しつつ、資金が届かないのではないかとの不安も抱いている。