英国スーパーマーケットも大混乱!コロナ禍で発生した「ピンデミック」とは

太田美和子(リテイルライター)
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2020年5月に導入され、二次感染者発見の有効手段だった「NHSテスト&トレース」
2020年5月に導入され、二次感染者発見の有効手段だった「NHSテスト&トレース」

 英国で、パンデミックならぬ「ピンデミック」が発生した。ピンデミックとは、英国保健省が提供するアプリ「NHS(国民保健サービス)テスト&トレース」が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の濃厚接触者に対してその事実を知らせる「ピーン」という通知音と、「パンデミック(感染大流行)」を合成した造語だ。

 同アプリから濃厚接触の事実を通知された人は原則的に10日間、自主隔離することがルール化されている。この自主隔離政策によって以下に述べるような社会的混乱が7月に生じたので、「ピンデミック」と呼ばれるようになった。

 英国では、7月19日にイングランドの行動制限措置が緩和されたが、この頃にはすでにデルタ変異株による感染が急拡大していた。再びCOVID-19の感染者が急増すると、「NHSテスト&トレース」から通知を受ける人が急増した。行動制限措置を緩和する前のデータだが、7月8日から15日までの1週間だけでイングランドとウェールズの61万8903人に同アプリから自主隔離の要請が配信された。

 自主隔離者が増えると、社会的機能に支障が出始める。たとえば、ロンドン交通局では、300人が同時期に自主隔離した結果、地下鉄の2路線を運休せざるを得ない事態が生じた。地方自治体、消防署、発電所、上下水道、医療など17の業種は、自主隔離ルールから除外され、その従事者に「NHSテスト&トレース」から知らせが来ても、PCR検査結果が陰性だった場合は出勤できることになっている。食品メーカーは除外対象だが、スーパーマーケット(SM)はその対象ではない。

 イングランドでの自主隔離ルールは8月16日には緩和され、ワクチンを2回接種した人は通知を受けても陰性である限り自主隔離する必要はなくなった。しかし、それまでのあいだ、SMはさまざまな対処に追われることになった。

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