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SNSで売り込みと募集が横行!喫緊の課題、米アマゾンの偽レビュー対策は?

月刊アマゾン

米アマゾン(Amazon.com)が不正カスタマーレビューの抑制に向けた取り組みを強化している。米経済ニュース局のCNBCによると、2021年7月、アマゾンは米アップルに対し「フェイクスポット」と呼ばれる不正レビュー検出アプリをアプリ配信サービスから削除するよう要請した。こうしたアプリが人気を博す背景には、「虚偽レビュー」や「サクラレビュー」とも呼ばれる不正のまん延があると言われている。

不正レビュー検出アプリ登場も力不足

 このアプリはアマゾンの電子商取引(EC)サイトに投稿されるカスタマーレビューをAI(人工知能)で分析し、その信頼度を「A」~「F」の6段階で評価する。不正が疑われるレビューについては、信頼のおける出品者の商品を案内していた。

 だが、アマゾンによると、このアプリのレビュー分析で「信頼できない」と判断されたものは、そのおよそ8割が不正確。「顧客に誤解を与える情報を流し、出品者のビジネスに悪影響を及ぼした」と批判した。

 アップルのガイドラインでは、虚偽情報を広めたり、許可なく他社のサービスにアクセスしたりするものを禁じており、同社はこの規則に準じてフェイクスポットをアプリストアから削除したようだ。

フェイスブックではびこる取引グループ

 アマゾンでは、人的パトロールと機械学習システムで不正レビューを削除している。20年には全体の約99%に当たる2億件以上の疑わしいレビューを掲載前に削除。それらのアカウントが再び投稿できないようにする措置も講じ、関与した出品者アカウントを停止した。

 だが、それでもアマゾンのシステムをくぐり抜ける不正レビューが後を絶たない。アマゾンによると、同社の監視が届かないSNS(交流サイト)上で、レビューの書き込みを売り込んだり、書き手を募ったりするグループが数多く存在するという。アマゾンは状況を深刻に受け止め、SNS運営企業に対策を強化するよう求めている。

 21年1~3月には約1000のグループが虚偽レビュー取引に関与しているとして、各SNS企業に報告した。報告を受けたSNSがそれらをサイトから削除するのにかかった日数は平均5日。1年前の平均45日から改善が見られた。だが、アマゾンは「SNSは、我々が報告する前に発見・削除できるように十分に資源を投じるべきだ」と非難している。

 アマゾンは名指しすることは避けたものの、ここのところ問題視されている米フェイスブックのサービスではびこるレビュー取引グループを懸念しているようだ。米『ウォールストリート・ジャーナル』紙によると、好意的なレビューを書く見返りに、商品代金を払い戻すという手口が一般的。払い戻しにはオンライン決済のペイパルが使われる。また、商品に35ドル(約3800円)のギフトカードを同梱し、金銭受け取りの条件としてレビューを書いたり、五つ星をつけたりすることを義務付けているものもあるという。

英規制当局、アマゾンなどを正式調査

 こうした状況を各国の規制当局や議員も問題視し始めた。例えば英競争規制当局の競争・市場庁(CMA)は21年6月、不正レビューに関してアマゾンと米グーグルに対する正式調査を開始したと明らかにした。

英規制当局、アマゾンとグーグル対象の正式調査を発表(英競争・市場庁=CMAのウェブサイトより)

 CMAは両社が自社サイトで不正レビュー排除に向けた対策を十分に講じていないと疑っている。もし虚偽レビューを放置するなど、消費者保護法に違反していると判断した場合、改善策を確約させるなど強制措置を取り、訴訟も辞さないとしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大でEC需要が増大し、消費者の商品レビューへの依存度が高まっている。米テクノロジー大手の市場支配力や個人情報保護違反を懸念する規制当局や議員らは一連の調査の中で、消費者を欺く不正レビューにも焦点を当てるようになった。