フードサイエンティストも参画!ターゲットの好業績を牽引する「PB戦略」の全て

太田美和子(リテイルライター)
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2020年、米小売市場におけるプライベートブランド(PB)の売上は大きく増加した。PB売上総額は1588億ドル(約17兆4680億円)で、対前年比11.6%増と急伸している。コロナ禍での内食需要の高まりが大きな要因だが、一方で消費者がPBに求める価値や役割も大きく変化しつつあるようだ。新ブランドの展開で成功している米小売大手ターゲット(Target)の取り組みを中心に、米国のPB市場について考察する。

“再発掘”がテーマターゲットのPB戦略

 ターゲットは、PBの“再発掘”をテーマに掲げ、16年からPBの大幅なてこ入れを行ってきた。結果、これまでに30を超す新たなブランドが誕生している。

 このうち、食品・飲料PBを“再発掘”するうえでのテーマは「ブランドを立ち上げ、ユニークな商品を開発し、ファンを獲得する」というもの。このシンプルな戦略をもとに開発された食品・飲料の旗艦ブランドが「グッド&ギャザー(Good & Gather)」だ。社内の食品・飲料PB開発チームが品質や味に妥協せず、いかに値ごろな価格を実現するかに挑戦したブランドで、時間に追われる消費者に家庭での食事を毎日楽しんでもらおうという想いから、「グッド&ギャザー」の商品はいずれも人工香料や人工甘味料、合成着色料、高果糖コーンシロップを含んでいない。

19年9月15日に発売したターゲットのPB「グッド&ギャザー」
19年9月15日に発売した「グッド&ギャザー」は、1年足らずで売上高10億ドル(約1100億円)に到達した

 商品の品揃えは、牛乳や卵といった必需品から、「ローステッド・ガーリック・フムス」(フムスはひよこ豆をペースト状にした中東の料理)など最新の食トレンドを取り入れた商品まで幅広い。19年9月15日に発売された商品は約650品目だったが、20年末には2000品目まで増えた。グッド&ギャザーは、今やターゲットの食品・飲料PBの中で最多の品目数を誇るまでに成長している。売上も好調に推移しており、19年9月の発売から1年足らずで10億ドル(約1100億円)を超す大成功を収めた。人気のカテゴリーは、スパークリング・ウオーター、グラノーラ、栄養バーなどで、これらの売上高は旧ブランドの商品と比べて2ケタの伸びを見せている。

 そしてグッド&ギャザーは目下、「キッズ」「オーガニック」「季節商品」「プレミアム」といったサブテーマを設けてアイテムを拡大中だ。20年9月にはプレミアムブランドとして「グッド&ギャザー・シグナチャー(Good & Gather Signature)」を投入。商品価格は2.99ドルから9.99ドルで、60品目を同時発売し、こちらも売れ行き好調だ。

 一方、長年ターゲットの食品・飲料PBの代表的ブランドだった「アーチャー・ファームズ(Archer Farms)」と「シンプリー・バランスド(Simply Balanced)」は随時廃止されることになった。一方、「マーケット・パントリー(Market Pantry)」は缶詰や基礎調味料などベーシックな商品に絞り込んで存続させる。

開発過程のすべてを内製化

 食品・飲料市場に占めるターゲットのシェアは

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