AI、新テクノロジーの活用で進むアメリカのフードロス削減の最前線

太田美和子(リテイルライター)
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2015年9月、国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable DevelopmentGoals)」が採択されて以降、世界中の小売企業での食品廃棄物削減に向けた取り組みがこれまでにも増して盛んになった。その最前線に立っているといっても過言ではない米国では、食品廃棄物を削減するための新たな取り組みが次々と誕生している。本稿では米国小売企業各社の取り組みと、アプリやAIなど最新のデジタル技術を活用した最新の食品廃棄物削減の手法についてレポートする。

SDGs採択で高まる食品廃棄物削減への意識

 SDGsで掲げられた17の目標のうち、12番目の「つくる責任 つかう責任」では、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」ことをターゲットの1つに挙げている。

 SDGsの採択以降、米国でも食品を取り扱う小売企業の多くが独自の達成目標を定め、食品廃棄物削減への努力をし始めた。

 たとえばウォルマート(Walmart)は、25年までに米国をはじめとする主要市場で食品を含む廃棄をゼロにする目標を立てている。実際に20年度にはウォルマートUS(米国事業)だけで、前年度よりもフレッシュフード(生鮮食品・日配品・総菜)の廃棄を5700万個減らした。

農産物の表面にコーティングを施して長く鮮度を保つ「アピール」
農産物の表面にコーティングを施して長く鮮度を保つ「アピール」を、クローガーやザ・フレッシュ・マーケットが導入した

 食品廃棄物削減に取り組むのは大手小売企業ばかりではない。カリフォルニア州とネバダ州に計124店舗のSMを展開するラリーズ(Raley’s)は4月7日、同社の社会的責任に関する目標と実行内容をまとめたインパクトレポートを初めて発行した。30年までに食品廃棄物を50%以上削減する目標を立てている同社は、廃棄総量の70%以上を寄付や再生利用に転用したことを報告した。

 米国内には、こうした小売企業の取り組みの推進をサポートする組織がいくつか存在する。食品産業協会(FMI)、食品製造者協会(GMA)、全米レストラン協会(NRA)が共同で組織した食品廃棄物削減同盟(FWRA)は、削減に取り組むための手順など、多くの情報提供を行っている。米農務省(USDA)も食品廃棄物を減らす努力をサポートするためのウェブサイトを設け、食品の寄付に関わる法律の解説、再生利用法についての情報などを提供している。

 19年9月には食品廃棄物削減イニシアティブ「10×20×30」が立ち上がった。これは世界の大手小売企業10社が、各社のサプライヤー20社とともに30年までに食品廃棄物の半減をめざす活動で、日本からはイオン、米国からはクローガー(Kroger)やウォルマートが参画している。米国でも事業展開する世界的な小売グループ、アホールド・デレーズ(AholdDelhaize)は20年までに食品廃棄物20%削減を目標にしていたが、同イニシアティブに参画するにあたって、これを30年までに50%削減と目標値を引き上げた。

AIやアプリも活用 新たな削減方法

 食品廃棄物を減らすために

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