非財務情報の開示が上場企業にとって大事になった理由 先進欧州小売に学ぶ社会課題への取り組み

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行や人種差別への抗議運動が巻き起こった2020年、世界中で命や人権に対しての関心がこれまで以上に高まった。
それら課題に対する欧州の小売企業の取り組み内容は容易に知ることができる。それは、EU(欧州連合)が14年10月に「特定の大規模事業・グループの非財務情報開示に関する欧州議会・理事会指令」を発令したからだ。従業員数500人以上の企業に環境保全や人権保護などへの取り組みを開示することが義務付けられた。

なかでもフランスは非財務情報開示に関して最も先行する国といえる。すでに01年に上場企業に社会や環境に対する対策を事業報告書に記載することを義務付けている。さらに10年には報告すべき42項目を決め、講じた是正措置を記載する法律を定めた。
報告すべき項目が多岐にわたるため、ボリュームは相当量になる。フランス小売大手のカジノ・グループ( G r o u p eCasino)では19年に財務情報から非財務情報まで、ありとあらゆるテーマを一括記載する「2019ユニバーサル・レジストレーション・ドキュメント」を発行した。400ページを超える大作である。
フランス以外の国の小売企業各社も工夫をこらして非財務情報をまとめている。そのまとめ方や見せ方に個性があって興味深い。オランダに本社を置くアホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)が20年に発表した「人権レポート2020」も関心を引く資料の1つだ。
理由は、
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