5年分の成長をわずか5週間で達成!?業界関係者必読、NRF2021で語られたこと

文=平山幸江(リテールストラテジスト)
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毎年1月にニューヨークで開催されてきたNRF(全米小売業協会)ビッグショー。110年の歴史上初めてヴァーチャルイベントとなり、第一弾イベントが1月12日から22日に開催された。本稿ではNRF2021の主要セッションの中から、有力小売業幹部が登壇した注目セッションをピックアップ、その要旨をまとめた。

ウォルマート、来店客数減っても店舗はより重要に

 NRFビッグショー2021は講演数、参加者数など規模は前年の約半分になったものの、劇変した小売環境の中で米国小売業界が短期間にデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、ニューノーマルに適応するだけでなく商機に変えようとする意気込みが伝わってきた。

 まずは世界最大の小売業、ウォルマート(Walmart)の取り組みから紹介したい。同社チーフカスタマーオフィサーのジェイニー・ホワイトサイド氏は初日に「経済展望」をテーマに登壇し、コロナ感染拡大後の対応と今後について語った。同氏はオンライングロサリーの急増に伴い、ストアピックアップと配送サービスが2020年度第一四半期に300%成長し、「5年間分の成長を5週間で成し遂げた」と語った。重要なことは、この急成長を可能にしたのが店舗網であり、食品のフルフィルメントは倉庫で行うことはできない点を指摘。「コロナ禍で店舗への来店客数が減ったとしても店舗は今後さらに重要になる」と強調した。

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右:ウォルマート社チーフカスタマーオフィサー、ジェイニー・ホワイトサイド氏
左:デロイト社チーフグローバルエコノミスト、アイラ・カリッシュ氏
出所:全米小売業協会ビッグショー2021ウェブサイト

 またDXにおけるデータの重要性にも触れ、「当社は食品、調剤、金融サービスなどあらゆるものを販売し、膨大な顧客データを持っている。これを活用して顧客をより深く理解し、顧客により良いサービスを提供することを望んでいる」と述べた。データ活用については顧客からの信頼が欠かせず、顧客に嫌な思いや不信感を与えずに活用することの必要性に言及した。

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ウォルマートの直近の四半期業績

ベッド・バス&ビヨンド、DXで企業再生

 アマゾンエフェクトだけでなく、DXの遅れや店舗の劣化などの理由で16年度第4四半期以降業績が低迷していたのが住関連専門店チェーンのベッド・バス&ビヨンド(B e d b a t h &Beyond、同名の店名は以下BBB)だ。19年11月にターゲット(Target)のCMO(最高マーケティング責任者)から同社CEOに就任したマーク・トリットン氏は、800店舗以上あったクリスマスツリーショップと倉庫の売却、店舗と本社社員3300人の解雇、BBB店200店舗削減、マーケティング、マーチャンダイジング、デジタル、ブランドなど6部門のトップの総入れ替えなどの改革を行った。

ベッド・バス&ビヨンド社
ベッド・バス&ビヨンド社「カレッジ・フロム・ホーム」
出所:ベッド・バス&ビヨンド社

 改革の骨子はコロナ禍によるEC売上急増を追い風に、ECオーダーを店舗でフルフィルメントする、その機能強化である。5月には店舗および駐車場でのカーブサイドピックアップを全店の90%に拡大、9月にはオンデマンド配送サービスのシップト( S h i p t )とインスタカート(Instacart)と契約し、即日配送を開始した。これらの努力が功を奏して、20年度第2四半期には

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