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米小売業「顧客ニーズ適合度」ランキング! アマゾンが初の首位になった事情

顧客データ分析を基にマーケティング戦略提案をグローバルに行っている英ダンハンビー(dunnhumby)は毎年、米国の主要食品小売業(グロサリー企業)を対象とした「消費者ニーズへの適度合」のランキングを公表している。コロナ禍によって消費環境が大きく変化するなか、今回のランキングでアマゾンが初のトップとなった。その背景と興味深いランキングの内容についてまとめた。
取材協力=高島勝秀(三井物産戦略研究所)

写真は11月25日、米ニューヨーク州で(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

アマゾンが初の首位、ウェグマンズ、アルディも浮上!

 英ダンハンビーは2021年1月、第4回となる「消費者ニーズへの適合度」ランキングを発表した。同調査は、企業規模やROA(総資産利益率)、ROE(総資本利益率)といった経営効率に基づくものでも、消費者の人気投票でもなく、消費者の購買行動に関するアンケート結果と各企業の業績指標とを組み合わせた指標だ。2018年の初回から小売企業の実力を知るための有益な指標と位置付けられてきたが、1月に発表された第4回では、アマゾン・ドット・コム(Amazon.com:以下、アマゾン)が初めて首位となり、話題になっている(図表①)

図表①米国小売業者ランキング

 このランキングは、ダンハンビーが選定した、顧客が小売企業や店舗を選ぶ上でのニーズ(図表②)に関する詳細なアンケート調査を行い、その結果に基づいて各ニーズのその時点での重要度を算定し、それらへの各企業の適応度を測定し、それに過去5年間の業績推移を加味して作成した指数に基づくもの。

図表②英ダンハンビーがアンケートで使用している、顧客がグローバルリテーラーを選ぶうえでのニーズ(ドライバー)

 過去の結果をみると、2018年と2019年は低価格かつ高品質なプライベート(PB)商品で知られているトレーダー・ジョー(Trader Joe’s)が首位だった。2020年には、地域住民の嗜好に合った品揃えや店舗立地の「利便性」の重要性が高まり、地域密着型のH.Eバット(HEB)が首位となったほか、マーケット・バスケット(Market Basket)やウェグマンズ(Wegmans)の評価が高まった。

 そして2021年のランキングでは、過去3年間、3位だったアマゾンが初めて1位となっている。HEバットやトレーダー・ジョーも上位にとどまっており、前述のウェグマンズや、低価格訴求型の小型店を展開するアルディ(Aldi)が順位を上げている。

EC拡充中のターゲットが急上昇!

 2021年の調査では、通常の結果に加えて、コロナ禍という特異な状況下でのランキングも別途作成し発表している。これはアンケートでのコロナ禍を踏まえた設問への回答状況と、コロナ禍における2020年単年の業績から算定したもの。コロナ禍の顧客ニーズとしては、買物に要する時間の短さや、入店時の列待ち時間の短さが、感染予防上での安全や安心という評価につながり、「スピード」が最重要との分析結果が示されている。

 同ランキングでもアマゾンが首位となっているが、三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は、注目ポイントとして、ターゲット(Target)が2位にランクインしたことを挙げる。同社は実店舗でのEC対応を拡充しており、2021年の本調査においても10位と、初めて上位14社に登場している。「顧客への適応度を高め、好業績へとつなげていることがうかがえる」と高島氏は指摘する。

 コロナ禍収束の兆しはいまだ見えず、人種差別問題をはじめ多くの社会問題に直面するなど、米小売の先行きは混沌の様相だ。ウィズコロナ時代を勝ち抜くのはどのプレイヤーなのか。「顧客を知りそのニーズに適合していくことが小売企業の実力であるといえるが、その度合いを測る上でダンハンビーの調査は有益であり、市場動向を見る上では要注視である」(高島氏)。