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焦点:世界的なコンテナ不足、中国の輸出急回復に影

香港で撮影された貨物船
12月10日、中国はコロナ禍からの景気回復ぶりが突出しているが、世界的な輸送用コンテナの不足がその勢いを鈍らせようとしている。香港で9日撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

[北京/シンガポール 10日 ロイター] – 中国はコロナ禍からの景気回復ぶりが突出しているが、世界的な輸送用コンテナの不足がその勢いを鈍らせようとしている。コンテナ運賃は過去最高に跳ね上がり、製品を輸出するメーカーは、せっかくの需要急増に思うように応じられない状態だ。

中国の11月の輸出は前年同月比21%の急増となった。同国の巨大な工業パワーが次々と製造する家電製品や玩具、衣服、新型コロナウイルス関連などの個人防護具などに対し、世界中で需要が高まっている。

同国の貿易収支は黒字に大きく傾いており、コンテナ1個分の製品を受け入れている間に3個分の製品を輸出している状況だ。海外でのコロナ感染拡大で中国へのコンテナの帰港が遅れていることもあり、コンテナの大きな不足が回り回って同国の輸出を脅かし始めている。

世界貿易の約60%はコンテナで輸送されており、国連の貿易データによると、世界には現在1億8000万個のコンテナが存在する。

遅れが遅れを生む展開

輸出向けの製造業拠点、浙江省義烏市で鏡製品を米国の小売り大手ウォルマート・ストアーズ や住宅用品販売のホーム・デポなどに輸出するチャールズ・シュー氏は「発注が押し寄せているのに出荷できない」と嘆く。

「うちの工場には箱が積み上がり、もうあまりスペースが残っていない。コンテナの予約は難しく、注文を入れるため代金上乗せを強いられている」

中国コンテナ産業協会(CCIA)によると、コロナ禍により欧米で貨物の取扱能力が落ちているため、コンテナが到着してから出港するまでの「ターンアラウンド・タイム」は平均100日と、コロナ前の60日から大幅に長期、コンテナ不足に拍車を掛けている。米国の輸入企業は11月に出荷の遅れを報告した。

大概は貨物も運ぶ国際航空旅客便の大半が運航を休止したことも、海上貨物輸送の需要増加につながった。

新型コロナウイルスワクチンが世界的に普及するまで、こうした状況に大きな変化が見込めない中、貿易と貨物輸送の構図は一変し、海運運賃は跳ね上がった。リフィニティブのFreightosデータによると、中国から米東海岸までの40フィート・コンテナのチャーター料金は12月10日を含む週に4982ドル(約51万8000円)と、6月1日から85%も上昇して過去最高を記録した。

運賃も急上昇

欧州向けの運賃はこの間に142%、スエズ運河経由の地中海向けは103%、それぞれ急上昇した。

航路が短距離で利ざやが小さい運賃では、さらに跳ね上がっている例もある。中国発・シンガポール/マレーシア向けの運賃を示す寧波輸出コンテナ運賃指数(NCFI)は、東南アジアの輸出業者が必死に競い合う中で、10月初めから12月初めにかけて300%近くも急上昇した。

コンテナメーカーは需要に応えるため、工場の勤務シフトを拡大して生産能力を上げているが、追い付いていない。それでもCCIAのデータによると、世界のコンテナ生産の96%を占める中国は、9月の生産数が30万個と、月間で5年ぶりの高水準となった。

CCIAによると、その後も生産はフル稼働しているが、鉄鋼や木材、条件を満たす溶接機など資材・設備が不足し、これ以上の増産を阻んでいるという。細かい規格に従って正確にサイズ測定され、強度が確保されたコンテナでなければ、船への積み込み作業で壊れる恐れがある。

コロナ禍の影響で中国以外の消費市場で平時よりも輸入が増え、輸出が減っていることも、中国以外でコンテナが記録的に滞留する現象につながっている。

マフィア登場、闇ルートも

金もうけのにおいをかぎつけた一部の中国民間企業はコンテナをかき集めて抱え込み、より高い料金を提示した業者に貸し出している。

義烏市を拠点に家財道具や玩具、文具を輸出する人物は「ついにマフィア(闇業者)が登場した」と語る。上乗せの料金を払って正規のルート以外でコンテナを集めているというのだ。

「コンテナ1個あたりの金額が3000人民元、約500ドルだ。しかも運賃そのものが既に平時の3倍近い。だれもが金をもうけているが、わが社はもうかっていない」、 「目下、コンテナは2週間から4週間待ち。未だにコンテナを入手できるかどうか分からない」とこの人物は続けた。

いくら大枚をはたいても出荷できないと嘆く関係者もいる。

寧波の運送業者は「倍の料金を払っても海運会社が輸送スペースを予約してくれないことがある」と話す。

「過去には、例えば南米向けのコンテナ運賃はこれまでは、目をむくほど高い時でも3000ドルだった。それが今は6000ドル払っても海運企業は予約を保証してくれない」

料金釣り上げにあらがえず

この結果、韓国やマレーシアなどの海運業団体は、運賃の急上昇分を相殺してもらえるよう政府に支援を仰いだ。国内での商品販売を増やそうと試みる企業もある。

しかし、釣り上げられた料金に応じる以外に選択肢のない企業もある。

広東省で輸出業を営むヒル・シャオ氏は「いくら我慢してもきりがなく、ついに折れて『いくらお望みですか』と聞く羽目になることもある」と言う。

「コンテナがなければ商品を出荷できず、代金は手に入らない。キャッシュフローがひどく圧迫されている」

業界関係者らは、新型コロナのワクチンが普及し、国際的な移動が活発化するまでコンテナ不足は続くと予想している。

HSBCのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏は「現在、世界的にモノの需要が異例の高まりをみせているが、2021年になれば西側諸国を中心にサービス業主導の景気回復が始まるため、それも収まりそうだ」と予想。「同時に、ワクチンが普及すれば貨物も運べる航空旅客便の不足の問題など、物流上の滞りも緩和するはずだ」と述べた。