焦点:コロナ禍で見えてきた、生産「グローバル化」の新たな姿

2020/10/13 10:45
ロイター

中国淮安市の電気自転車工場
10月7日、ニューヨークを拠点とするデルタ・チルドレン社はウォルマートなどの小売業者向けのベビーベッドを中国で生産しているが、一時は生産の米国移転を検討した。写真は2019年5月、淮安市の電気自転車工場で撮影(2020年 ロイター)

[シカゴ/ブリュッセル 7日 ロイター] – ニューヨークを拠点とするデルタ・チルドレン社はウォルマートなどの小売業者向けのベビーベッドを中国で生産しているが、一時は生産の米国移転を検討した。米国の輸入関税で多額のコストが発生するのに加え、新型コロナウイルスの世界的大流行により供給不足が生じたためだ。

ロス米商務長官は今年1月、新型コロナの大流行がこうした雇用のリショアリング(国内回帰)を「加速させる」との見通しを示した。一部の政策当局者は、寸断された供給網に対処するため企業が事業を縮小し、グローバル化の後退が進むとまで予想した。

だがデルタ・チルドレンのジョー・シェイミー最高経営責任者(CEO)は米国への生産移転について、労働コストが増える上、供給業者を確保できないため、最終的に選択肢から排除した。同社は依然、供給網の分散化を計画しているが、それは生産の一部を東南アジアへ移すことによってだ。

シェイミー氏はロイターに「メード・イン・USAが有効なのは、品質が同じで価格競争力がある場合だけだ。だが現時点では、その条件は満たされていない」と指摘。「当社は中国から全面撤退するのではなく、分散化する方針だ」と述べた。

世界各国が景気後退に陥り、外出制限や対人距離確保によって人の移動が抑え込まれたため、世界の貿易量は必然的に減少した。だが相次ぐグローバル化の波によって築き上げられた経済的な結び付きは、一部の人たちが考えたよりも強靱であることが立証されつつある。

世界貿易機関(WTO)は6日、世界の財の貿易量が今年、前年比9%減少するとの見通しを示し、4月時点の予想(12-32%減)を上方修正した。

中国の鉱工業部門は着実に新型コロナ流行前の水準に回復しており、8月の輸出は前年同月比9.5%増と過去1年半で最大の伸びとなった。ドイツのIFO経済研究所が発表した同国の9月の輸出期待指数は約2年ぶりの高水準に上昇した。

保護貿易、代償は免れず

ワシントンからウェリントンに至るまで、政治家は今年、特に「必需」品を中心に生産を自国へ移すよう企業に求め、自給自足を訴えてきた。

通商政策の監視機関グローバル・トレード・アラートによると、各国が防護用品や医療物資を確保しようとする中、新型コロナに起因する貿易制限措置は過去最高の235件となった。巨額の補助金による影響は依然、はっきりとは分かっていない。

ただ、保護主義的な発言が鳴り止まないにもかかわらず、新たな輸入関税はピークだった過去2年間と比べ、はるかに少なくなっている。2005年から13年までWTOの事務局長を務めたパスカル・ラミー氏は、生産の国内回帰はわずかにとどまると考えている。

ラミー氏は生産の国内回帰について「言うだけで実行に移さないことが増えるだろう。その理由は単純で、高くつくからだ」と言う。「グローバル化は効率的で苦痛を伴う。脱グローバル化は非効率的で苦痛を伴う」

主要国で唯一、国内回帰に予算を付けた国が日本だ。日本は生産を国内に移す企業向けに2200億円を計上。その第1弾として57件のプロジェクトに574億円を支給した。

グローバル・トレード・アラートの創設者であるスイス・ザンクトガレン大学のシモン・エベネット教授は「各国の高官はいろいろと強い言葉を発しているが、工場を国内回帰させるために多額の資金を出す段階には達していない」と述べた。

新型コロナ大流行の前でさえ、トランプ米大統領が2018年に中国からの輸入品に課した関税の主な狙いは、生産を米国内に回帰させることだった。だが企業は、中国からコストの安い東南アジアに生産を移転。供給の分散化を推進するため「チャイナ・プラス・ワン」戦略を導入した。

オバマ政権下で米通商代表部(USTR)代表を務めたマイケル・フロマン氏は「(新型コロナの大流行が)米国への大規模な生産回帰に結びつくかどうかは、まだ分からない」と話した。

米リショアリング研究所によると、過去10年間にケンタッキー州のゼネラル・エレクトリック(GE)やオハイオ州のスターバックスが米国内に一部の生産を移した。

だがWTOが6日公表した統計では、2020年上半期の貿易における中間財の比率は52%と安定的に推移しており、今年に入って大きな国内回帰の動きは起こっていない模様だ。米国の貿易赤字は8月、14年ぶりの高水準となった。

昨年、対米輸出における中国のシェア低下で恩恵を受けたのは主にメキシコや低コストのアジア諸国だった。新型コロナの大流行にもかかわらず、ベトナムの輸出総額は今年1-9月期に4.2%増えた。輸出先の上位2カ国は米国と中国だ。

ラミー氏は、新型コロナに対処し将来の感染症大流行に備えようとすれば、必然的に消費者保護が重視され、従来より高いリスク想定に基づき物事が進められるようになると予想。

その結果、「拠点分散化の組み替えが起こる。それは脱グローバル化ではなく、グローバル化の新たなバージョンだ。再編ということだ」と語った。

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