アングル:米ヘルスケア株に押し目買い、民主圧勝懸念に動じず

ロイター
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ウオール街に掲げられたアメリカの国旗
10月8日、米株式投資家の間で、既に市場全般に対して歴史的な割安水準となっているヘルスケア株の押し目買いを検討する動きが広がりつつある。写真はウオール街で2日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

[ニューヨーク 8日 ロイター] – 米株式投資家の間で、既に市場全般に対して歴史的な割安水準となっているヘルスケア株の押し目買いを検討する動きが広がりつつある。

11月3日の大統領選で野党・民主党候補のバイデン前副大統領が当選し、さらに上下両院を民主党が制する「ブルー・スウィープ(トリプルブルー)」の展開になれば、医薬品価格引き下げや医療保険の拡充に道が開かれ、ヘルスケア業界が逆風に見舞われる恐れがあるとの見方が一般的だ。

しかし一部の投資家は、これらの要素はヘルスケア株に織り込み済みか、懸念されるほどの打撃にならない可能性がある半面、比較的安定した利益見通しや医療技術の革新がプラスに働くと予想している。

D・A・ダビッドソンのウエルス・マネジメント調査ディレクター、ジェームス・ラガン氏は「妥当なバリュエーションで取引されている質の高い企業なら、運用資産のヘルスケア株比率をある程度高めるべきという議論には強い説得力がある」と話した。

選挙戦はバイデン氏有利との見方が高まり続け、ヘルスケア株は今年のほとんどの期間上値が抑えられた。4月末以降にS&P総合500種が17%上昇したのに、ヘルスケア株は7%しか上がっていない。

リフィニティブ・データストリームによると、S&P総合500種銘柄全体の予想利益に基づく株価収益率(PER)は21.3倍だが、ヘルスケア株は15.8倍と26%割安。ここ数週間でやや格差が縮小したものの、先月には一時少なくとも25年ぶりのディスカウント率を記録した。

エドワード・ジョーンズのヘルスケア・アナリスト、アシュティン・エバンス氏は「バイデン氏の支持率が世論調査で上向くとともに、株価全般が持ち直す中でヘルスケア株が出遅れ始めた」と解説する。

バイデン氏は、公的保険を民間保険と並ぶ選択肢として提供するとともに、オバマケア(医療保険改革法)の基盤強化を図る見通し。政府が新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発を製薬業界に頼っている以上、医薬品価格の大幅な引き下げの法制化はパンデミックがもっと落ち着いた段階になるだろう。ただ薬価引き下げはトランプ大統領も主張しており、党派の対立が目立たない問題だ。

もっともUBSグローバル・ウエルス・マネジメントのアナリスト、エリック・ポトカー氏は、選挙後の議会が過激ではないヘルスケア改革策を取りまとめ、ヘルスケア業界と投資家にとって長期的な視界が明確になると前向きに考えている。

では具体的にどの銘柄が物色対象となるのか。エドワード・ジョーンズのエバンス氏は、製薬大手メルクと医療機器のメドトロニックに押し目買いの好機があるとみている。メルクとメドトロニックの年初来下落率はそれぞれ12%と約7%だ。

RSインベストメンツのポートフォリオマネジャー、メリッサ・チャドウィック・ダン氏は長らく、糖尿病治療技術やバイオテクノロジーの関連銘柄を保有し、今後の技術革新をもたらす可能性が大きいとみているため、株価が下がれば買い増す構えだ。「現在のあらゆる不確実性から身を守る手段は、大々的な技術革新に尽きる」という。

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