アングル:コロナ禍の中国製造業、労働者シェアリングに意欲

2020/09/03 11:00
ロイター

北京にある半同大工場の食堂
8月27日、中国・広東省の中山市政府は、香港が本拠の時計メーカー、金源精密科技が100人余りの従業員を一時帰休にしようとしていると聞きつけ、その人員を他のメーカーに一時的に移す取引を仲介した。写真は5月、北京にある半同大工場の食堂で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

[北京 27日 ロイター] – 中国・広東省の中山市政府は、香港が本拠の時計メーカー、金源精密科技が100人余りの従業員を一時帰休にしようとしていると聞きつけ、その人員を他のメーカーに一時的に移す取引を仲介した。こうした動きが今、広がっている。

金源の従業員140人は向こう半年間、スマートウォッチや体重計のメーカー、広東沃莱科技に引き取られる。

中国では新型コロナウイルス感染症流行のピーク時に最大8000万人が職にあぶれたとも推計されている。これが引き金になって、中国の輸出製造業の中心地では「労働者シェアリング」が進む。中国政府による雇用柔軟化促進策の一環だ。自営業者やパートタイム従業員も含め、雇用を支え社会の安定を維持しようという政府の狙いがある。

金源のワン・ヤオクン人事部長は「受け取る時給はそれまでより多少下がるかもしれないが、それでも働きに行けるのは一時帰休よりはましだ」と話した。同社は中山で既に800─1000人を削減してきた。

中国の総労働人口は2017年以来、やや減少傾向にあり、昨年は約7億7500万人だった。このうち輸出セクターは約1億8000万人。同国では製造業はここ数年、従業員の誘致に苦労するようになっている。就労年齢層や若者層は製造業を敬遠している。

その上、新型コロナが経済を混乱させ、セクターによる好不況のアンバランスも悪化した。医療機器やコンピューター、モバイル機器などで特需が起きる半面、繊維製品や玩具、家具といった伝統的な労働集約産業は需要が弱い。

金源と沃莱の合意では、出向する従業員の雇用主は引き続き金源で、同社が業況改善を期待する半年後には元の職場に戻る。金源のワン氏は「当社への注文の大半は欧州連合(EU)やスイスからなので、年末までは完全に調子が戻ることはないとみている」という。

広東省、江蘇省、浙江省といった輸出型産業地域では、地元政府がこの数カ月、同様の取り決めを進めている。中央政府も7月、全国向けの指針でこうした取り組みにお墨付きを与えた。

一大製造業拠点の広東省・東莞市政府によると、同市では2月以降、750社の計約2万人が対象になった。

ハイテク産業の振興地域となっている広東省・河源市は300社超を擁するが、新型コロナによる受注減で、そのうち100社以上が操業を縮小。地方政府当局者によると、5月下旬に労働者シェアリング計画が始まり、これを通じて再配置されたのは3000人を超える。

中国では、労働者を貸し出すことで利益を得ることは禁じられている。前記の当局者によると、企業は当初、労災への法的対処や従業員の引き抜き、企業秘密の保全などを心配したが、政府の仲介を通じてなんとか合意に至っているという。

こうした労働者シェアリングの取り組みは中国だけのユニークな現象ではない。新型コロが世界中で多くの仕事を消滅させたのに伴い、一部の世界的企業も余剰化した人員の再配置に動いている。

コロナ後も定着か

中国の一部の産業関係者や政府当局者は、新型コロナの沈静化後もこうした取り組みが続く可能性を見込む。

コンサルタントのダッカ-フロンティアの北アジア担当アナリスト、ボーヤン・シュー氏によると、米中のいわゆる経済のデカップリングや労働人口の縮小化などの懸念が、労働慣行の柔軟化をさらに推進する。

ノムラのエコノミストのリーシェン・ワン氏は、こうした取り組みを成功させるには労働者の権利保護が欠かせないとの見方を示した。「労働者が仕事に参入しやすく、生産サイクルが異なる幾つかの製造業種では、労働者シェアリングによって労働力の稼働率が向上し、平均賃金コストも低減できて、生産性と収益性を改善し、結果的に労働者の所得が増える」という。

例えば、電子機器セクターの繁忙期は通常、第4・四半期で、繊維産業とは重ならない。

江蘇省・淮安市で工場を操業する台湾の電子機器メーカー、達方電子の広報担当者によると、同社は3月から、200人をホテル向け布製品のメーカー、康乃馨から借りた。「双方の生産サイクルが違う。だからわれわれは労働力をシェアできる」という。

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