[東京 19日 ロイター] – 米国か中国のどちらかの商圏を選択せざるを得ない場合、どちらを選ぶか──8月ロイター企業調査では、1年前と同じこの質問に対し米商圏を選ぶと答えた企業の割合が10ポイント程度増え、6割超となった。中国ビジネスにおける安全保障上のリスク意識が強まっているとみられる。中国の事業拠点を他地域へ移管する動きも、1年前に比べて広がっている。
この調査は8月3日から13日に実施、495社に送付し、回答社数はおよそ225社。
「もし米国か中国のどちらかの商圏を選択するよう迫られた場合、どちらを選択するか」という問いに、今回62%の企業が米国商圏と回答。昨年7月調査の53%から増加した。
回答した企業では「日本社会自体が米国に依存しており、今さら中国に依存することはリスクが大きい」(運輸)との声や、「商圏的には華僑の多い地域で展開しているため中国を意識すべきだろうが、国防も含めて考えれば米国を選択するしかないだろう」(サービス)といった、ビジネス自体より国益全体に照準を合わせた判断が目立った。
中国商圏を選択すると答えた企業は38%、昨年の47%から減少した。
「依然として巨大市場」(繊維)といった声や、「将来的な経済の伸びしろは中国の方が大きい」(化学)など、商圏の大きさを重視する声が多い。
米国政府は、国防権限法により中国企業5社からの政府調達を禁じたほか、その5社の製品を使う企業との取引も停止することを決めている。
日本ではそこまでの強い規制は実施されていないが、「政府からどちらかの商圏に入るよう指導があった場合は逆らえない」(電機)という声はある。もっとも、今現在どちらかの商圏を選択する必要に迫られていると感じる企業は5%程度にとどまっている。
一方、事業拠点を中国から移動させる企業は徐々に増えている。「移管実施済み」が7%、「移管検討中」が14%、両方を合わせると21%で、昨年6月調査では「実施済み」の選択肢はなかったが、「移管検討中」は7%だった。
今回、移管を実施ないし検討とした企業のうち、84%は中国以外のアジア諸国を選択。その理由として、中国における安保などさまざまなリスクや、他のアジア諸国での市場アクセス、設備投資実施の利便性を挙げる声が多かった。
移転先に国内を選択した企業は22%だった。「海外人件費の上昇(今後も含め)やカントリーリスクに加え、歩留まりや品質を考えると、国内生産拠点の優位性はかなり高まっている」(ゴム)といった声もある。
米国による対中制裁強化が事業収益に与える影響については、「おおいにある」が4%、「ある程度ある」が42%と、合わせて46%で受けていると回答。関税上乗せなど貿易摩擦が激しかった昨年6月段階では影響ありとの回答は55%で、そのころに比べるとやや和らいではいるが、それでも半数近い企業が影響を受けている。