[東京 16日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は16日、今年のアジア経済が過去60年で初めてゼロ成長になるとの見通しを示した。新型コロナウイルスの感染拡大で域内のサービス業や主要輸出先に「前例のない」悪影響が出ていることが背景。
IMFアジア太平洋局のチャンヨン・リー局長がオンライン会見で明らかにした。
同局長は、移動制限や社会的距離を保つ政策など一連の新型コロナ対策で特に打撃を受けている家計・企業に的を絞った支援を提供する必要があると主張。
「世界経済にとって非常に不透明感が強く、厳しい時期だ。アジア太平洋地域も例外ではない。新型コロナがアジア太平洋地域に及ぼす影響は深刻で、全面的で、前例のないものだ」と述べた。
同局長は「通常通りの企業活動の時期ではない。アジア諸国はあらゆる政策手段を総動員すべきだ」と主張した。
IMFは16日公表したアジア太平洋地域に関する報告書で、今年のアジア経済の成長率が過去60年で初めてゼロになる公算が大きいと予測。
マイナス成長が予想される他の地域よりは相対的に底堅いものの、今年のアジアの経済成長率は、世界的な金融危機の際の平均水準(4.7%)や1990年代後半のアジア通貨危機の際の水準(1.3%)を下回るとの見通しを示した。
来年のアジア経済については7.6%の成長を予想。この予測は封鎖措置が成功を収めることを前提としているが、先行きは極めて不透明という。
IMFは、今回の新型コロナの流行について、リーマン・ショックが起きた2008年の世界的な金融危機とは異なり、外出制限や店舗の休業で域内のサービス業が直接ダメージを受けていると指摘。米欧などの主要貿易相手国で需要が低迷していることから輸出産業も打撃を受けているとの見方を示した。
今年の中国の経済成長率の予測は1.2%。1月時点のIMFの予測は6%だった。輸出低迷に加え、社会的距離を保つ政策で国内の経済活動が停滞することが背景。年内には経済活動が回復し、来年は9.2%の成長を見込めるという。
ただIMFは、今回の中国経済の予測にもリスクがあると指摘。感染が再び拡大したり、正常化が遅れる可能性があるとの見方を示した。
IMFはアジア諸国について、市場への潤沢な流動性の供給や中小企業の資金繰り支援が必要だとも表明。
アジアの新興国は2国間・多国間のスワップ枠の活用や、国際金融機関への金融支援要請が必要であり、新型コロナの影響で大規模な資金流出が起きる場合は必要に応じて資本規制も活用すべきだとしている。