業績冴えない米ターゲット、不調を招く「陳腐化」と「顧客離れ」とは
米ディスカウントストア大手のターゲット(Target)の業績が、競合のウォルマート(Walmart)やコストコ(Costco Wholesale)と比較して冴えない。不振の理由としては、同社の多様性・公平性・包括性(DEI)廃止の方針をめぐる顧客のボイコットがある。しかし以前から、品揃え、品質、値ごろ感、クリンリネスについて一部消費者から問題が指摘されていた。ライフスタイルリーダーとしてブランド並みの「夢」を売ることができたターゲットについて、いくつかの米メディアが指摘する「陳腐化」と「顧客離れ」を読み解く。
DEIより根深い業績低迷の理由
ターゲットの2025年2~4月期の既存店売上高は対前年同期比3.8%減となり、アナリストの予想を下回った。同社経営陣は、消費者信頼感の低下と買い控えによる裁量支出の弱さ、トランプ関税の不透明さ、さらにDEI関連のボイコットが響いたと説明している。これに伴い、同社は6月、通年の売上高見通しを対前年比1%増から1ケタ台前半の割合で減少に転じるとした。
一方、同期間中のウォルマートは既存店売上高が同4.5%増となったほか、コストコに至っては同8%増と気を吐いている。したがって、消費者の景況感悪化や関税などは低迷の理由の説明としては弱いのでないかと考えられる。

ボイコットについて、DEIの取り組みを縮小したターゲットとウォルマートの来店客数が対前年同期比で減少したものの、DEIを継続したコストコでは伸びを確保していると、米市場調査企業プレーサーエーアイ(Placer.ai)などが報告している。しかしながら、ウォルマートの客足の落ち込みは非常に小さく、しかも既存店売上高が逆に上昇している。
ターゲットでは「意識の高い顧客」の割合が、低所得層に人気のあるウォルマートよりも高いとされる。だが、それを差し引いても、ターゲットの業績が冴えない大きな理由がDEI廃止に起因するボイコットだとする説も、現状を上手く説明できていないのではないだろうか。

翻って、商品の構成比について、ウォルマートが不況でも売上があまり落ちない食料品に依存する一方、ターゲットは売上の約65%が非裁量支出に分類される衣類や家庭用品である。それらの品目は需要が低迷しており、ターゲットが構造的に弱点を抱えていることは確かだ。しかし、そうした環境下においても、eコマースの巨人アマゾンでは、衣類や家庭用品の売れ行きは好調である。
そのため、一部の米メディアでは、ターゲットの客足や売上が落ちた主な理由が、ボイコットや商品構成、消費者の景況感やトランプ関税以外のところにあるという説が有力になりつつある。