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メタやグーグルへの脅威に!アマゾンの広告事業が急成長する事情

小売企業が自社のウェブサイトやアプリ、店頭のデジタルサイネージなどで広告を運用する「デジタル・リテイルメディア」の市場が急成長している。米調査会社インサイダー・インテリジェンスによると、2023年の米国での同分野の広告費は対前年比20.5%増の約450億ドル(約6兆円)となり、デジタル広告費全体の16.2%を占める見通しだ。こうしたなか、ECの巨人アマゾン(Amazon.com)の広告事業も急拡大しており、ネット広告で先行する米メタや米グーグルを脅かす存在になりつつある。

メタとグーグルの”広告減収”に対しアマゾンは約20%増

アマゾンの広告サービス事業の売上高が順調に推移している。2022年10~12月期(Q4)は前年同期比19%増の115億5700万ドル(約1兆5400億円)だった。(2021年 ロイター/Abhishek N. Chinnappa)

 アマゾンが先ごろ開示した決算資料によると、22年の年間広告売上高は377億3900万ドル(約5兆300億円)で、前年から21%増加した。22年10~12月期の広告売上高は115億5700万ドル(約1兆5400億円)で対前年同期比19%増となっている。

 一方で、「フェイスブック」「インスタグラム」などを運営するメタは苦戦を強いられている。同社の22年10~12月期の売上高は対前年同期比4%減の321億6500万ドル(約4兆2900億円)で、3四半期連続の減収だった。売上高の97%を占めるネット広告収入は312億5400万ドル(約4兆1700億円)で、こちらも前年同期から4%減少。メタの業績を巡っては、景気減速による広告出稿の減少やドル高、中国発の「TikTok」などとの競争激化に加え、米アップルのプライバシー保護を目的とした広告規制強化による広告効果の低下が指摘されている。

 米経済ニュース局のCNBCによれば、グーグルはアップルによる広告規制強化の影響はあまり受けていないものの、景気減速の影響は少なくないようだ。持ち株会社である米アルファベットの22年10~12月期売上高は前年同期比1%増の760億4800万ドル(約10兆1400億円)で、売上高全体の約8割を占める主力ネット広告事業の売上高は同3.6%減の590億4200万ドル(約7兆8700億円)だった。

デジタル広告市場で世界3位の規模に

 インサイダー・インテリジェンスによると、アマゾンは世界のデジタル広告市場で7.3%のシェアを獲得し、3位に浮上した。これに対しグーグルとメタのシェアはそれぞれ28.8%と20.5%。アマゾンは、グーグルやメタからいくらかのシェアを奪ったとしても依然として、この市場で2社に大きく遅れを取っている。だが、ここ最近は広告予算の一部をアマゾンに振り向ける動きが広がっている。

 CNBCによると、スマート目覚まし時計を手がける米ロフティーは、22年のブラックフライデー前後の4日間、メタへの広告予算比率を従来の71%から40%に減らした。それに代えて、初めてアマゾンに広告を掲出し、その予算比率を10%にした。これによりロフティーの4日間の売上高は過去最高の25万ドル(約3300万円)に達した。

 ロフティーの経営者は、「フェイスブックの広告はまったく機能しなくなった。以前と同じ広告効果を得るためには、より多くの広告を配信しなければならず、単にコスト高だ」と述べた。

5割超がアマゾンへの広告増やす

 アマゾンへの広告出稿は、より高い効果が見込めると期待されている。なぜなら、ウェブサイトやアプリ内での顧客の検索行動が直接購買につながるからだ。これに対し、フェイスブックが導入しているようなターゲティング広告は顧客の絞り込み精度が低下しており、それに伴う費用上昇が広告主の負担になっている。グーグルの広告もかつてのような効果を見出せていないという。

 米投資会社のコーエン・アンド・カンパニーが広告主を対象に行った調査によると、グーグルとフェイスブック以外の広告プラットフォームで、今後重要になると考えられるものの1位はアマゾンだった。広告プラットフォームとしてのアマゾンの人気はTikTokをも上回ったという。また、広告主の54%が23年はアマゾンへの広告支出を増やすと回答した。「マクロ経済への逆風を考えると、メタの広告シェアは23年にさらに低下するだろう」とコーエンのアナリストは指摘する。