[ワシントン 30日 ロイター] – 米商務省が30日発表した7月の個人消費支出(季節調整済み)は前月比0.6%増と、底堅く伸びた。景気後退入りへの懸念を一段と和らげる材料となる可能性はあるが、所得の伸びが緩慢なことから個人消費のペースは保たれないとみられる。市場予想は0.5%増だった。
ここ1年間続いている米中貿易摩擦は金融市場を混乱させている。米国債市場では長短金利が逆転し、景気後退への懸念が浮上。過去最長期間続いている米景気拡大が軌道から外れるとの不安が広がった。ただこのところの貿易や在庫関連の統計に加え、7月の個人消費支出は、米経済が減速する中でも景気が急速に悪化しているわけではないことを示している。
オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)の米国担当シニアエコノミスト、Lydia Boussour氏は「政策の不確実性が増大し、金融市場が不安定化する中でも、大規模な貯蓄が緩衝材となり、米国の消費は勢いを保っている」と述べた。
ただ、トランプ政権が9月と12月に対中関税措置第4弾を発動させる中、米国の消費は今後打撃を受ける恐れがあるとの見方も出ている。実際、米ミシガン大学がこの日に発表した8月の消費者信頼感指数の確報値は2016年10月以来の低水準となったほか、コンファレンス・ボード(CB)が27日に発表した8月の米消費者信頼感指数は前月から低下した。
JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「消費者信頼感と消費との間にそれほど強い関連はないものの、このところ消費者信頼感の低下が顕著になっていることで、近い将来に消費関連の統計が軟調になる可能性はある」と述べた。
景気減速の主な要因は、米政権が導入した1兆5000億ドル規模の減税政策や財政出動の効果が薄れていることだ。また、米中貿易摩擦は製造業や設備投資に打撃となっている。設備投資は第2・四半期に縮小した。
貿易摩擦を主因とする設備投資や製造業の低迷、世界経済の減速、そして国内の物価上昇圧力が弱い状態が続いていることを踏まえると、米連邦準備理事会(FRB)は来月も再び利下げするとみられる。
個人消費支出(PCE)価格指数は0.2%上昇した。食品が値下がりする一方でエネルギー製品とサービスが上げた。前月のPCE価格指数は0.1%上昇だった。
7月の前年同月比は1.4%上昇。前月は1.3%上昇だった。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたPCEコア指数は前月同様、前月比0.2%上昇した。7月の前年同月比は前月同様1.6%上昇だった。PCEコア指数の前年同月比は今年、FRBの物価目標である2%を下回り続けている。
BMOキャピタル・マーケッツ(トロント)のシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「コア指数の短期トレンドは上向いてはいるが、前年比での伸びが低迷していることに加え、通商を巡る保護主義が強まっていることを踏まえると、FRBは9月17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定せざるを得ないだろう」と述べた。
7月のインフレ調整後の実質消費支出は前月比0.4%上昇だった。前月は0.2%上昇していた。7月に加速したことは、第3・四半期初めに個人消費が底堅さを保ったことを示唆する。個人消費は第2・四半期に4年半ぶりの大幅な伸びだった。
第2・四半期国内総生産(GDP)は年率で2.0%増と、前期の好調な3.1%増から減速した。第3・四半期GDPの予想は1.5―2.3%増だ。
個人消費の内訳は、モノが0.9%増。娯楽関連製品や自動車が好調だった。サービスは0.5%増だった。
個人所得は前月比0.1%増と、2018年9月以来の小幅な伸びだった。前月は0.5%増加していた。
賃金は0.2%増。金利収入は1.8%減。貯蓄は前月の1兆3200億ドルから1兆2700億ドルへ減少し、18年11月以来の低水準だった