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アングル:米製造業、大統領選の鍵握る州で雇用が悪化

集会に集まった労働者
8月22日、2016年の米大統領選で支持政党が民主党から共和党に転じてトランプ氏の勝利に貢献し、20年の大統領選の鍵を握る米諸州で、国内製造業の減速が雇用に悪影響を及ぼしつつある。写真は21日、フィラデルフィアの精錬工場による解雇についての集会に集まった労働者ら(2019年 ロイター/Mark Makela)

[ワシントン 22日 ロイター] – 2016年の米大統領選で支持政党が民主党から共和党に転じてトランプ氏の勝利に貢献し、20年の大統領選の鍵を握る米諸州で、国内製造業の減速が雇用に悪影響を及ぼしつつある。

トランプ氏は有権者に米景気は好調で雇用は増えていると訴えているが、ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシンなどこうした州では、他の州に比べて製造業雇用への打撃が顕著となっている。

米経済は好調な消費支出のおかげで全体では順調な成長を続けているが、トランプ氏の大統領就任を後押しした製造業に依存する州では減速しており、この点が20年の大統領選の見通しを複雑にしている。

トランプ氏再選の鍵となるいくつかの州で製造業減速の影響をまとめた。

製造業の鈍化

米製造業の雇用は国内景気の好調を支えに2018年に力強く増加した。しかし最近は製造業雇用の伸びは全国的に鈍っており、7月までの半年間の製造業雇用の伸び率は0.3%と、その前の半年間の0.9%から鈍化した。

製造業は海外市場の減速、米中通商紛争、投資の鈍化などの逆風に見舞われた。特に製造業が大きな打撃を受けたのが中西部や北東部の州だ。こうした地域では製造業雇用が1980年代から大幅に減少していた。

ペンシルベニアとウィスコンシンでは製造業雇用が減少し、オハイオとアイオワは他の州に比べて雇用が弱い。

ミシガン州の製造業雇用の伸びは他州並みだが、鉄鋼大手USスチール<X.N>が今週ミシガン州で数百人規模の人員を削減する計画を発表しており、軟化の兆しが出ている。

ペンシルベニア、ウィスコンシン、オハイオ、アイオワ、ミシガンは08年と12年の大統領選で民主党のオバマ氏を支持しながら16年に共和党のトランプ氏支持に転じた6州のうちの5州で、20年の大統領選でも共和、民主両党の支持がきっ拮抗する「スイングステート」になると目されている。ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガンの3州はトランプ氏の16年の勝利が僅差だった。

16年に支持政党が民主党から共和党に変わった残る1つの州はフロリダだが、同州は製造業雇用の多い他の南部諸州と同様に同セクターの雇用が全国平均を上回るペースで拡大している。

労働省のデータによると、ペンシルベニアの7月末の製造業雇用者数は56万1400人と半年間で1.5%減少。製造業雇用者数が20万人以上の州で最大の落ち込みとなった。

ウィスコンシン州の製造業雇用はこの間に0.9%減少し、製造業を主要産業とする州では3番目に大きい落ち込みだった。

アナリストによると、いわゆる「ラストベルト(さびた工業地帯)」と南部州の格差拡大はトランプ氏が鉄鋼とアルミニウムに追加関税を導入したのが一因とみられる。追加関税は米企業の保護が狙いだったが、サプライチェーンの混乱も招いたという。

国内で鉄鋼産業が最も集中するインディアナ州の製造業雇用は7月までの半年間に0.5%減少した。