中国、元安容認し米農産品の輸入も停止 貿易摩擦激化へ

ロイター
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中国企業、米農産品の輸入を停止=商務省
5日、中国商務省は中国企業が米国の農産品の輸入を停止したことを明らかにした。また、8月3日以降に購入手続きが行われた米国の農産品に対し輸入関税をかけることを排除しない姿勢を示した。写真は2019年5月に撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

[上海 5日 ロイター] – 中国は5日、過去10年余りで初めて1ドル=7元を超える元安を容認した。また、米国の農産品の購入を一時停止すると発表し、米国との貿易摩擦をエスカレートさせた。

人民元急落の背景には、トランプ米大統領が1日、中国からの輸入品3000億ドル分に制裁関税を課す意向を示し、米中の「休戦」を突如破ったことがある。

トランプ氏は5日、為替操作をしているとして中国を非難した。同氏はツイッターに「中国はほぼ史上最低の水準まで通貨を下落させた。これは『為替操作』だ。FRBよ、聞いているか?これは重大な違反行為で、いずれ中国を著しく弱体化させることになる!」と投稿した。

米国がどのような対応をとるか具体的な言及はなかった。一部のアナリストは、元安を受けて貿易を巡る対立が通貨戦争という新たな危険な局面に入る可能性を指摘する。

トランプ大統領のコメントの後、中国商務省は、中国企業が米農産品の輸入を停止したことを明らかにするとともに、8月3日以降に購入手続きが行われた米国の農産品に対し輸入関税をかけることを排除しない姿勢を示した。

5日の各国金融市場は人民元の急落を受けて大荒れとなった。中国株式市場の上海総合指数は1.62%下落し、終値で2月22日以来の安値を記録。世界各国に株安が広がった。

米国でも主要株価3指数がそろって約3%急落し、1日としての下落率は年初来の大きさとなった。

中国人民銀行は通貨安競争を否定

中国人民銀行(中央銀行)は5日の人民元の対ドル基準値(中間値)を8カ月ぶりの元安水準に設定し、元売りが加速するきっかけとなった。

関係筋がロイターに明らかにしたところによると、中国の金融当局は、市場が米中貿易摩擦や弱い経済成長率を巡る懸念を織り込めるよう1ドル=7元を超える人民元安を容認したという。

人民銀の易綱総裁は中銀のウェブサイトに掲載した声明で、中国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を考慮すると足元の人民元は適切な水準にあるとの認識を示した。その上で、中国は競争的な通貨切り下げを行わないとし、為替管理政策の安定と持続性を保つと強調した。

これより先、人民銀は声明で、元安の主な要因は保護貿易主義や中国製品への関税だと説明する一方、中国の為替政策スタンスは変わらないとし、双方向への元相場の変動は正常だとの見方を示した。

アナリストの間では、中国は米国との通商協議をうまく進めるために人民元を下支えしてきたが、緊張が高まる中、中国政府が為替を貿易戦争の武器に加える可能性があるとの見方が出ている。

キャピタル・エコノミスクスの中国担当シニアエコノミスト、ジュリアン・エバンズ・プリチャード氏は、人民銀が1ドル=7元の防衛をやめたことは、中国側が米国との通商合意を断念したも同然であることを示していると指摘した。

中国国内市場の人民元は2008年3月以来の安値となる1ドル=7.0352元で5日の通常取引を終了した。1ドル=7元を超える元安は2008年5月9月以来となった。

貿易摩擦の激化で中国当局が人民元の安定を維持する理由が減る中、元安が一段と進み、7.3元まで下落するとの見方も出ている。

人民元が貿易戦争の武器に

INGのアジア太平洋担当チーフエコノミスト兼リサーチ責任者、ロブ・カーネル氏はリポートで「中国当局はもはや手段を制限する必要があるとは考えていないようで、いまや為替も武器の1つとみなされている」と指摘した。

アナリストはこれまで、当局は資本流出のリスクを懸念して元安を抑制しているとみていた。

貿易摩擦を背景に中国経済はここ1年で減速しているものの、前回の景気低迷局面で導入した資本管理策や中国の株式・債券に対する海外からの資金流入拡大を受け、急速な資本流出は生じていない。

中国は2015年に人民元を切り下げて世界の金融市場を揺るがし、相場安定のために1兆ドル相当の外貨準備を投入した経緯がある。

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