膨大な人口を有し、近年は経済発展や技術開発の加速によって規模を拡大している中国・東南アジアの小売市場。中国ではアリババ(Alibaba)をはじめとしたECプラットフォーマーが「市場統合」を進める一方、東南アジア諸国では国ごとに異なるかたちで市場が成熟しようとしている。
中国
アリババによる「巨大市場の統合」進む
中国小売市場のトレンドを一言でまとめると、「オンラインを起点とした巨大市場の統合」である。2022年の中国の小売市場規模は約5兆5000億ドル(約770兆円:1ドル=145円換算)であり、世界最大だ。
地理的に広大な商圏を掌握することは難しく、もともとは地域ドミナントの小売チェーンが各地に散在する状況であった。こうしたチェーンのマーケットシェアは中国全体で見ると1%未満がほとんどで、いわば有象無象の小売企業がひしめく、フラグメント(細分化された)市場というのが、中国小売市場のこれまでの姿だった。
それが2010年代初めあたりから、ECプラットフォーマーがオンラインの世界を起点にこの巨大市場の統合を進め始めた。そのなかでもアリババの市場統合の動きはすでにオフラインへも展開されており、オンライン・オフラインの両面で、中国小売市場を手中に収めようとしている。
アリババのEC事業は、祖業であるB2Bオンラインプラットフォーム「Alibaba.com」のほか、B2Cの「Tモール(Tmall)」。そして、C2Cの「タオバオ(Taobao)」と全方位的に展開している。そこにオフラインの生鮮スーパーである「盒馬鮮生(Hema Fresh)」、そして百貨店業態の「銀泰商業集団(Intime)」も加わり、オンラインとオフラインをつなぐニューリテール(ボーダーレスリテール)として1つのかたちを見せた。
なかでも盒馬鮮生は、中国国内で300店舗以上を展開している。業態も基本フォーマットである「フーマーフレッシュ」に加えて、小型業態の「フーマーmini」、オフィスビル内などに出店するコンビニエンスストア(CVS)サイズの「フーマーF2」、生鮮食品に特化した「フーマーマーケット」など多岐にわたる。これら店舗網がフルフィルメント倉庫の役割も担い、最短30分で配送を行うことで、オフラインとオンラインの融合を果たしているのだ。
もう一方の銀泰商業集団は、もともとは中国の大手老舗百貨店であった。14年からアリババが出資を始め、17年には約3000億円を投じて買収に至った。そこから“デジタル百貨店”として変容を遂げ、わずか1年で売上高を
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