デロイト トーマツ グループが集計・発表した2020年度の世界の小売業売上高ランキングによると、コロナ禍という苦境の中でも、上位250社の総小売売上高は過去最高を記録。ウォルマート(Walmart)やアマゾン(Amazon.com)など米国資本の巨大企業のほか、中国のJD.comがトップ10入りを果たすなど、アジア太平洋地域でも躍進が見られた。コロナ禍で消費行動がめまぐるしく変わっているなか、デジタル・ECをはじめ、“消費者の変化”をスピーディにとらえた企業とそうでない企業の明暗が分かれた格好だ。本稿では、上位企業の動向に加え、国・地域、商品セクターの視点からもランキングを分析していく。参考:1ドル=145円
●ランキングについて:デロイト トーマツ グループが発表している「世界の小売業ランキング2022」における売上高トップ250社ランキングのうち、本稿では上位100社を掲載した。データは、一般に入手可能な情報により、2020年度(21年6月までを期末とする事業年度)について、小売業のみの売上高を米ドルに換算して比較している。
EC、食品小売など“内需”企業が好調
デロイトが毎年発行している本ランキングは、20年度(21年6月までを期末とする事業年度)の公表データに基づいて世界の小売企業から上位250社を選定し、さらにその業績を地域別、商品セクター別に分析したものである。
2020年度は新型コロナウイルス(以下、コロナとする)禍真っただ中であったが、上位250社の総小売売上高は過去最高となり、為替調整後の売上高加重平均で対19年度比5.2%増の5兆1000億ドルに達した。コロナ禍の巣ごもり需要の高まりのなかで消費者がオンラインでの購買に移行したことで、オンライン専門企業が大きな成長を見せたほか、消費がサービス業を中心とした“外需”から在宅などの“内需”に切り替わったために、食料品・飲料小売企業やホームセンター(HC)などの小売企業の売上が増加した。
しかしこうした傾向は、ファッション・ラグジュアリー品を扱う小売企業、旅行関連企業、EC対応ができていなかった企業の売上が減少したことで、一部打ち消されている側面もある。
今回のランキングにおいて上位250社にランクインするためには、少なくとも41億ドルの小売売上高が必要であり、この数字は年々増加傾向にある(19年度:40億ドル、18年度:39億ドル)。また、当期純利益を開示した191社のうちの82.7%(158社)が利益を計上し、上位250社の平均純利益率は0.2 ポイント(pt)上昇して3.3%に改善した。しかし、減収を記録した企業は69社となり、19年度から14社増えている。また、5 年間の年平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は、前年度(14~19年度)から0.3pt減少し4.7%であった。
上位10社中5社が2ケタ増収を達成
上位10社については、
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