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他社ネットスーパーの配送に積極的なアマゾン 背景にある2つの動きとは?

米アマゾン(Amazon.com)と欧州自動車大手のステランティス(Stellantis)は2022年1月5日、ECの配送用車両や車載情報システムなどの分野で複数年契約を締結したと明らかにした。

ステランティス、アマゾンにEV供給

 新型コロナによる巣ごもり需要の増大やサプライチェーンの停滞を背景にアマゾンの物流事業への投資が拡大している。アマゾンは21年10月、年末の繁忙期に向けて物流態勢を強化したと明らかにした。航空貨物機や貨物船、トレーラー、配送バンなどの輸送資源を総動員したり、物流施設の人員を拡充したりした。

 ステランティスはこれまで、アマゾンの北米・欧州におけるラストワンマイル配送用車両として、「ラム」や「フィアット」「プジョー」「シトロエン」などの小型商用車を供給してきた。今回の提携により、23年にラムブランドの大型商用バンの電気自動車(EV)を開発・生産する。これを最初の法人顧客としてアマゾンに供給。23年以降、毎年数千台規模を納入する。

アマゾンのラストマイル配送用車両(出所:米Amazon.com

欧米で食品販売・配達強化へ

 こうした物流資源を生かし、アマゾンは他社向け配送サービスも手がける。米メディアのジ・インフォメーションは21年12月、アマゾンが競合小売企業の食料品を配達するサービスを欧州全域や米国で始めると報じた。

 同社は約1年前に英国で「アマゾン・フレッシュ・マーケットプレイス」と呼ぶサービスを始めた。英スーパーマーケット(SM)チェーンのWMモリソン・スーパーマーケッツ(WM Morrison Supermarkets)や生活協同組合コーポラティブ・グループ(コープ)と提携し、プライム会員にこれらSMの商品を販売している。

 日本でもSM大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)と提携し、ECサイトやアプリで受注したライフの商品を顧客に配達している。米メディアによるとアマゾンは22年に同様のネットSMサービスを欧州や米国でも始める予定。米宅配代行大手インスタカート(Instacart)と直接競合することになるとみられている。

宅配専用「ダークストア」の隆盛

 コロナ禍を背景に、食料品など日々の生活に必要な商品をネットで注文する人が増えている。こうした消費行動を受け、アマゾンは20年10月、オンライン注文から1時間で生鮮食料品を店頭受け取りできるプライム会員向けサービスを傘下の食品SM「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」全店で始めた。

 また、20年9月にはホールフーズの新業態店として、宅配専用の食品SMをニューヨーク市南部ブルックリンでオープンした。この店舗には客がいない。注文が入ると従業員が棚から商品を集めて、配達するものだ。

 こうしたEC用日用品の物流拠点は「ダークストア」と呼ばれ、最近はこの仕組みを活用した宅配業者が増加し、競争が激化している。米ダウ・ジョーンズのマーケットウォッチによると、米料理・食料品宅配大手ドアダッシュ(DoorDash)は米国でダークストアを25拠点開設。それぞれの施設で生鮮食料品や冷凍食品、地場産品、菓子など2000点以上の商品をそろえている。

15分以内の「超速宅配」が台頭

 一方で、小売大手と宅配代行大手が提携する動きも出ている。20年8月には米ウォルマートがインスタカートと提携しアマゾンへの対抗姿勢を鮮明にした。インスタカートはロサンゼルスやサンフランシスコなどでウォルマートの食料品や日用品、家電製品などを最短1時間で配達している。

 こうした中、最近は、食料品や日用品を注文から15分以内に配達する「超速宅配」がスタートアップ企業を中心に台頭している。マーケットウォッチによると、この市場には「バイク(Buyk))」や「ゴーパフ(GoPuff)」、「ジョーカー(JOKR)」といった企業が参入している。ドアダッシュは21年12月、ニューヨーク市チェルシー地区で超速宅配サービスを始めた。インスタカートもこの分野に参入するとの観測が出ている。